process 8 beTa
海外では地球外生命体との熾烈な領土争いが各地で勃発していた。未知の力に圧倒される国も出てきており、治安機能の衰退が懸念されている。
様々な国がその場しのぎの防衛壁を建設し、ブリーチャーたちの侵入を防ごうとしている。だがどんなに侵入経路を塞いだところで、穴はできてしまうものだ。
今までトカゲのような体をした生物がブリーチャーと認識されていたが、彼らには同系統の種がいた。触手を扱う生物も複数種、更にミミズやムカデに似た生物などの種類が発見され、被害が出ている。
複数種の存在がいたとなれば、おのずと敵の攻撃方法も変わってくる。それにより、対応の仕方も変わり、様々な武器の拡充が必要となる。
各国で対応を工夫しながら住民生活を守ろうとしているが、住民の移動を要請する以外に道はない場合もある。住み慣れた土地を追われ、刻々と変わりゆく日々に不満を漏らす者も少なくない。
不満の吐け口は暴動となり、混乱に乗じた窃盗が相次ぐ場所も出ていた。
混乱と腐敗の色に少しずつ染まっていく情勢に、諦めに似た嘆きの声。どうすればこの苦難を乗り切れるのか、誰でもいいから教えてくれという様々な声が聞こえてきそうなほど、悲惨な光景に変わっていこうとしていた。
海外に住む日本人も被害に遭っており、海外の状況が画面から切々と流れてくるのはもはや日常になってきていた。海外への防具配給、医療支援など協力を行いながら、自国の警戒もおこたらない。
主にブリーチャー種に有効な軍備調整を急いでいた。他国では放電体質者の性質を応用した部隊が運用・展開されており、苦しい情勢の
その気運もあり、
開発に
特に生化学ラボは大量のデータをさばくのに追われている。
室長の先石の顔は日に日に化粧感がなくなり、よく首や肩を回したり、腰を伸ばしたりする仕草が増えていた。
各ラボから出される要望に合わせてデータをまとめ、意見を添えて送る。ここ最近は木城もこの作業ばかりしている。
ブリーチャー対策防衛配備計画審査会まで時間もない。
装甲機械と人体をつなぐ媒体として、放電体質者には特殊な衣服を着てもらう。かなりタイトな服となり、体への密着感のある衣服となった。
その上から全身を機械で纏う形となるが、人型の装甲機械はまだ機動性と防御性能などに問題があり、実用化のレベルには到達できていない。
現段階では着用者の意思により関節をスムーズに動かせ、電撃の威力増幅と制御できる程度だ。とはいえ、改良の余地が残されていることに変わりはない。
ブリーチャー対策防衛配備計画審査会では、攻撃性能とバイクの法定速度程度で移動が可能、という点を推していく方針が決まった。
あとは機体に搭載する武器が、ブリーチャーたちに有効であることを証明できるデータを収集する必要があった。
日本だけでなく、海外にも使用してもらえるよう働きかけており、順調にデータも集まってきている。ブリーチャーたちに対して期待した効果があったとの情報もあり、研究員たちの努力が成果となって表れてきていた。
気持ちとしては余韻に浸りたいところであったが、浜浦所長から開発の速度を上げるよう指示もあり、たくさんの関係者が時間も忘れて機体の製作に
研究員の補充もしたいところではあるが、公にできるようにするには地ならしが必要だ。
政治家たちへの理解も進められ、法整備の検討会議も内閣府にようやく設置された。小出しながら、日本にも少しずつ広まっている。
賛否分かれる意見が噴出しており、関心も集まってきていた。それに伴い、政府から別の案件で依頼が来た。
警察・自衛隊に設けられる対ブリーチャー専門部隊新設に伴う武器・防具の開発だ。配置される部隊はブリーチャーが接近してくるのを事前に察知し、侵入を防ぐ役割を担うことになる。
だがブリーチャーたちの動きは思ったよりも俊敏であることが分かっており、課題は残されている。その点においては現状、戦闘機による対処で行うしかない。その役に成り代わるべく、
そして4月20日。ブリーチャー対策防衛配備計画審査会で
審査の結果次第ではプロジェクトが中止になるとあって、近々の異常な忙しさから解放されても落ち着かない研究員たちがほとんどだった。それに相反して、浜浦所長以外の室長たちはずいぶんと余裕な様子で、中止になるかもしれないというのに淡々と研究を進めている。
関原は第五会議室にふらりと現れた
適当なところで研究する、と先石は言ったが、決してブリーチャーたちから国を守るための研究をまたやるかは分からないと補足した。
浜浦所長ほど国の存亡や世界の危機に立ち上がろうという気概はなく、興味が湧いたからやっているだけだと、無関心を匂わせた。
話を聞いていると、どこか門谷と通ずるところがあり、関原はあの不健康そうな顔を思い浮かべてしまった。
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