process 4 学究の徒
清流のように澄み渡る朝。降り注ぐ陽光を体いっぱいに受けるスズメが嬉しそうに鳴いている。
回る換気扇から光が漏れ、研究室に差し込んでいる。1人研究室の机で突っ伏している関原は、頭の中にふわりと浮かぶ意識を認識した。
「っ……」
関原は重く息を落として体を起こす。横にあるパソコンに目を向けると、時間は朝の6時を過ぎていた。関原はまたやってしまったと落胆する。
不意に研究室のドアが開いた。階段下の1階のドアから入ってきたのは木城満穂だった。目が合うと、木城は薄く笑みを浮かべて近づいてきた。
「あら、お早いのね」
関原は咳払いをして起きたての喉で絞り出す。
「君もじゃないか」
「私はたまによ。あなたみたいに研究室でいつの間にか寝ちゃって泊まることになったりはしないわ」
木城は関原の隣の机にボストンバッグを置き、チャックを開けて中から本や薄型ノートPC、更に紙に包まれた怪しい物を出した。
「まだ作ってるのか、それ」
「ええ」
木城は雑にくるんだ包装紙を取る。Mサイズのピザくらいありそうな円盤がゴトリと音を立てた。重厚なフォルムと質感。円盤の上面は中心がほんのり膨らんでおり、まるでUFOのようなデザインだった。
木城は円盤を軽々と持ち上げ、底面にあるスイッチをつける。小さな作動音が鳴った途端、底面の四方に取りつけられたLEDが青い発光を見せた。
円盤は木城の手から離れ、飛び立つ。円盤は胴体を回転させながら宙に浮き、ゆらゆらと研究室を飛び回り出した。
「飛行に問題はないけど、移動速度と空間の処理速度がマッチしてないのよ」
UFOは蛇行しながらたまに止まっては後ろに下がり、また進むという不思議な挙動を見せている。
「間に合うのか? あと2ヶ月だろ」
「私を誰だと思ってるの?」
強気な笑みが関原に向けられる。関原は木城から視線を外し、席を立った。
「顔を洗ってくる」
関原は1階のドアに向かう。
「関原」
木城は関原の背後から呼び止める。
関原は振り返り、
木城は潤った唇に不敵な笑みを浮かべ、間を充分に取って口火を切る。
「あなたが出した今回のNWRC——ニュージェネレーション・ワールドロボティクスコンテスト——の作品、今までよりだいぶいい感じだったわ」
「……それはどうも」
関原は素っ気なくお礼を言う。
「いい順位を取れるんじゃない? でも、私の作品がぶっちぎっちゃうから、きっと惜しいことになるでしょうね」
自信満々で
長年、木城という人物と接し、特別標的にされている関原には嫌というほど分かっていた。
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