第10話 もしかして、俺の体、改造されちゃってる?④

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色欲の大蜘蛛(E)を倒しました。

経験値を獲得しました。

色欲のダンジョン(E)が攻略されました。

報酬:5157円獲得しました。

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「すごい。一回でEランクダンジョン攻略できちゃった」

「いや、京子が一緒に来てくれたおかげだよ」


 ダンジョン内時間で六時間半ほど経った頃、俺たちはダンジョンを攻略した。

 ダンジョンが攻略できたのが京子のおかげというのはあながち嘘ではない。

 京子とのダンジョン探索はかなり快適だった。


 まず、俺が敵を見つけ、京子がバフをかけてくれ、そして、忍び寄って倒すというルーチンで戦っていたのだが、京子のバフによって、『暗殺』や『一閃』みたいなスキルを使わなくても一撃でモンスターを倒せたのは大きい。

 そして、何より、移動中や休憩中に話し相手がいるというのは本当に助かる。

 特に休憩中なんかは一人だとめちゃくちゃ暇だ。


 Fランクダンジョン程度であれば、一気に駆け抜けて攻略することもできるが、Eランクダンジョンはそうもいかない。


 ダンジョンの中は電波もないし、虎の子のスマホは『ダンジョンGo!』のアプリから動かないので、使うことができない。

 ミュージックプレイヤーを買おうか迷ったが、音楽を聞いても暇が少し紛れる程度で根本的な解決にはならないと思う。

 もし一人だったら、休憩なしで一人攻略RTAをしていたか、途中で帰ることになっていただろう。

 一人攻略RTAをするにしたって、Fランクダンジョンより避けられないモンスターは増えるだろうから、体感で四時間はかかると思う。

 それだけの時間、休憩なしで駆け抜けるのは流石にしんどい。


(これは途中で脱出するのは当然だな)


 京子に聞いた話だと、ダンジョンを一度脱出すると、次に突入した時には脱出した場所から再開できるらしい。

 普通は潜って脱出してを繰り返し、何日もかけてダンジョンを攻略するそうだ。

 攻略報酬が一万円程度なのにそんな悠長で大丈夫なのかと思ったが、Eランクならモンスターを一体倒せば百円以上もらえるので、一日に何回か潜ってモンスターを百体くらい倒せば一万円になる。

 パーティ人数にもよるが、それだけでも生活はできるそうだ。


 確かに、ダンジョンに入ってからすでに十体以上のモンスターを倒してるけど、外の時間ではまだ三十分ちょっとしか経ってないんだよな。


 明日以降はEランクダンジョンに潜ってモンスターを倒しつつ、途中で脱出しながら攻略しよう。

 俺は心の中でそう決めた。


「三十分も経てば、ケンタ達はどこかに行ってますかね?」

「多分な。流石に見習い僧侶がEランクダンジョンを一人で六時間以上も生き延びられたとは思わないだろう」


 Eランクダンジョンの中のモンスターは結構動き回る。

 Fランクダンジョンであれば、モンスターはほとんど動かないので、どこかに隠れていれば長い時間やり過ごすことはできるかもしれないが、Eランクダンジョンでは隠れていてもモンスターに殺されてしまう。

 この情報は京子から教えてもらったことなので、京子にこの情報を教えたであろうケンタも知っているはずだ。


 多分、十分くらい出てこなければケンタ達も諦めるはずだ。


「そういえば、ダンジョン内で人が死んだ場合ってどうなるんだ?」

「よくわかりませんが、交通事故に遭ったということになるそうですよ? 死体は普通に家族に届けられるんだとか。なぜか警察とかは動かないそうですが」

「へー」


 やっぱりこのアプリの運営は謎だな。

 その辺は謎技術によってなんとかするのだろう。


 実は国の偉い人がこのアプリのことを知っていて、権力でなんとかしているとかではないと信じたい。


 いや、多分権力者がバックにいるんだと思うけど。

 銀行振込とかできてるし。


「じゃあ、京子が交通事故に遭ったという報道がされなければ、ケンタに生きてるってバレるんじゃないか? 確か、交通事故で死んだ人は後で調べられるんだよな?」

「それは大丈夫です。あの二人には私の本名は伝えてなくて、キョウコとしか名乗っていませんから。私もケンタとケンゴの二人のことは名前しか知りませんし。ケンタとケンゴが本名なのかも知りません」

「……ドライだな」

「信用できない人には必要以上に情報を渡さないだけです」


 それがドライだといったつもりだったんだが。


 ん?

 俺は本名を教えてもらえたということは、京子に信用してもらえたって思ってもいいのかな?

 休憩中に学校のこととか、友達のこととか色々教えてもらえたし。


「……そろそろ出ましょうか」

「……そうだな」


 これで、京子との探索も終わりだ。

 二人での探索は結構快適だった。

 何より、怖がられずに接してくれる女の子なんて、社長の娘さんの朱莉だけだったので、かなり楽しかった。


 そういえば、京子の制服、どこかで見たことがあると思っていたら、朱莉と同じ制服じゃないか?

 世の中思ったより狭いんだな。


(機会があればまた京子と一緒にダンジョンに潜りたいな)


 俺は少し名残惜しい気持ちを持ちながら、メッセージウインドウを進めていく。


「……ケンタ達、いないといいな」

「……そうですね」


 俺たちは少しだけ警戒を強めながらダンジョンを脱出した。

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