高卒、無職、ボッチの俺が、現代ダンジョンで億を稼げたワケ〜会社が倒産して無職になったので、今日から秘密のダンジョンに潜って稼いでいこうと思います〜
第11話 もしかして、俺の体、改造されちゃってる?⑤
第11話 もしかして、俺の体、改造されちゃってる?⑤
「ケンタ達はいないみたいですね」
「そうか、それはよかった」
ダンジョンから脱出してすぐに、京子は辺りをキョロキョロと見回す。
俺たちがダンジョンから脱出した場所はビルとビルの間の細い裏通りだった。
俺が突入した場所じゃないので、おそらく京子がケンタ達と一緒に突入した場所なんだと思う。
多分俺が京子のパーティに入ったことになっているから、脱出場所が京子の突入場所になったんだろう。
パーティ編成のやり方がよくわからず、京子に実践してもらいながら教えてもらったのでそういう感じになった。
ということは、俺側からパーティに誘えば、すぐに脱出しても問題なかったのでは? と思ったが、今更だろう。
それに、俺の方に誘っても問題は出てくる。
俺がダンジョンに突入した場所は男子トイレだったし。
いくら周りからは見えないからと言っても、男子トイレに入るのは京子も嫌だろう。
この場所は見通しは悪いが、隠れる場所もないので、どこかに隠れて見張ってるってこともなさそうだ。
京子はほっと胸を撫で下ろす。
「……今日は本当にありがとうございました」
俺の方に振り返って京子は深々と頭を下げた。
京子はやっぱり結構真面目だよな。
「……いや、別にいいよ。原因の一端は俺にもあったんだし。俺が何も考えずにFランクダンジョンを攻略したせいで、京子達はEランクダンジョンに行くことになったんだろ?」
「……そんなことありません。悪いのはケンタ達です。サグルさんは何も悪くありません」
「……そう言うってくれると助かるよ」
口では俺が悪いとかいってみたが、実際、俺も悪いのはケンタ達だと思っている。
京子を囮にしたりしなければ、三人とも逃げられて脱出できたかもしれないのに。
というか、おそらく問題なく脱出できただろう。
モンスターはそこまで早くなかったし、そこまで大きく動き回りはしないようだった。
京子を襲っていた飛蜘蛛も後百メートルも逃げれば逃げ切れたんじゃないだろうか?
「……それじゃあありがとうございました」
「おぉ。こちらこそありがとう」
京子は最後に深々と頭を下げると、その場から去っていった。
俺は少し名残惜しい気持ちでその背中を見送った。
「連絡先くらい、聞いておくべきだったかな」
京子は連絡先を聞けば教えてくれたかもしれない。
なんか、別れ際は京子も名残惜しそうにしてたし。
だが、長年のぼっち生活から、女の子に連絡先を聞くというのがどうしてもできなかった。
ここで連絡先を聞かなくても、聞いて断られても、どうせこれから先会うことはないのだから、ワンチャン、連絡先を聞いておいたほうが得だっただろう。
だが、損得だけで動けるのであれば、ボッチやってない。
「……仕方ない、報酬も入ったし、今日はパーっと美味しいものを食って帰りますか。せっかく渋谷にも来てるし」
俺はスマホでこの辺りのレストランを検索し始めた。
***
「結局、回転寿司に入ってしまった」
いや、色々と調べてはみたのだ。
渋谷だけあって五つ星レストランやら、高級フレンチやら、美味しそうな店はたくさんあった。
だが、今の格好はジーンズにシャツというかなりラフなものだ。
ドレスコードに引っ掛かるかもしれない。
そんなことを考え出すと、お高い店には行けなくなった。
結局、近くにあった妖怪マークの回転寿司に入ってしまった。
いきなりお金が入ったからっていきなりお高い店には行けないということだ。
「まあ、これが分相応というやつか」
いつもいってる店の方が美味しく食べられるし、結果的にはよかったかもしれない。
何度も行ったことのある店だったが、お金を気にせずに食べられるというのは気分がいいことだ。
いつもは食べない一番高い料理や、デザートなんかも食べてしまった。
ビールは五回もお代わりしたし、寿司も何十皿も一人で食べた。
頭より高く皿を積み上げてしまったぜ。
「というか、俺、食べる量増えてる?」
お金云々以前に、以前はこんなにたくさん食べられなかった気がする。
もしかして、これも『ダンジョンGo!』の効果か?
昼食の時もラーメン屋に入ったけど、いつもはしない替え玉を二回もしてしまったし、ダンジョンから脱出するたびにコンビニとかで何かを買ってつまんでいた。
そして、ビールを六杯も飲んだのに、あまり酔っている感覚がない。
もしかして、俺の体って、改造されちゃってる?
……怖いので、考えないようにしよう。
そう、動き回ったからきっとお腹が空いたんだ。
ダンジョン内ではかなり長い時間過ごしたから、久しぶりの食事でもあったんだし!
「いいだろ? 俺たちと遊ぼうぜ?」
「ちょっと、離してください!」
「ん?」
俺は聞き覚えのある声が聞こえたので、そちらの方を振り向いた。
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