第10話「マンデラーの恋人」を書いてみることに
あと2週間ほどで令和4年になろうとしていた。
女は、多忙な日々を送りながら、ぽつらぽつらと再び「マンデラーの恋人たち(初回に脳内に浮かんだタイトル)」の脳内スクリーンを見始めていた。10月21日に最初から最後まで早送り版とも言える映像を鑑賞していたので、あらすじは把握している。
しかし、再び細かいシーンが映り出したのだ。女は流れる映像と会話をただ受け流していた。何故、このような複雑な映像が流れるのか、女は深くは考えなかった。
主要人物だけでも1人につき軽く4~5名出ていた。やはりタイトル通りにマンデラエフェクトが関係している。世界線違いの登場人物たちがシャッフルしていて、しかもネット上でしかやり取りをしていない。
(とすると、ツ○ッターで繋がったけど、出会った2人は会えなかった2人「初代たち」の分岐分裂した2人なのか。世界線違いの私が履歴書を書いて、再就職をした呟きを今のフォロワーさん数名に目撃されていたアレと同じか……主人公はこの2人だな。フォロワーさんたちも1人につき何人も出て来るな。ややこしい。私やAさんのようなマンデラ現象が起きているフォロワーさんたちもいるみたい。なんか親近感)
自分が体験したことで見た脳内スクリーンであるのか否か、関連性は有りや無しか?女はそんなことを頭の端で考えてみたが、もう、どうでもよかった。見えたら楽しく見られればいいと思っていた。
そう、時折現れる脳内スクリーンをただひたすら見続けていた。
そうしているうちに、彼らの心情が少しずつ流れ込んで来た。
(あれ?おかしいな。文章化してないのに……気持ちが流れて来るのはなんでだろう?)
嬉しさや悲しさ、驚きや戸惑いが我が事のように思えて来る。涙が流れて女は狼狽えた。
それまでは登場人物の心情を理解するには、文章化の練習をしてみなければ分からなかった。練習を続けるうちに、脳内スクリーンは映画版から連続ドラマのように1話ずつ分割され、彼らの中に入り込み、目線や感情を自分が登場人物たちに憑依して理解し、モノローグや心情を感じ取っていたことが明らかになったのだ。
(まだ……書いてないのに……?)
更に詳細が見えるようになると、女は戸惑った。整理をしないと、あちこちに時代や世界線が飛んだシーンが行き当たりばったりに流れてしまう。そこで再び混乱してしまうのだ。
(これ……書いた方が収まるのかな。凄く複雑で面倒くさいなあ。でも、こんなに登場人物が沢山出て来て世界線も違えば家族も違うみたいだし、私に分かるものなの?なんかもっと沢山ワラワラと出て来て困るな……)
女はいつも脳内スクリーンを見ながら文章化をしているので、見たままを書き写す感覚で小説を書いていた。プロットと呼ばれる建築で言う設計図を用意する手立てがなかった。 また、作成が適わなかった。
(ちょっとだけ、書いてみようかな
……書いたら整理出来るかも)
最初はやはり、映画予告編で見たように、子供が両親の馴れ初めを訊き出すシーンである。2人が知り合う以前に、世界線違いの2人がツ○ッターで出会ったのだ。自分たちと同じ彼らではあるが、それは自分たちではない。言い淀む母親に父親が無難に応えて2人の記憶が呼び覚まされるシーンだ。
女は見たままを少しずつ文に形を変え、サイトに投稿し始めるのだった。
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