第6話:二人の王女と首脳会談
ヘカテリア王国との初めての外交が滞りなく終わり、私は王都の離宮に戻って数日が経ちました。今は、そのときに入手できたヘカテリア王国の情報の写しを借りてきて確認しているところです。魔法の力によって発展し、その力を以て魔物との戦いを切り抜けてきた国、というのが第一印象でしょうか。どうやら、魔物の脅威が世界的にも大きかったようで、人間同士での戦争はあまりなかったようです。
そして、魔物という脅威への対策として、国主導で魔法の教育を徹底しているようです。貴族も存在しており、主な役割としては私たちの国と同じように領地経営があるようですが、その他に魔物の襲撃などのときには騎士団を率いて魔物と戦うということもあるようです。それらの結果なのか、貴族は魔法の腕や剣の腕、それと民を率いる能力も重要視されているようで、それは王族も同様みたいです。つまり、ヘカテリア王国は魔法の腕による実力主義の傾向が強い国のようです。
しかし、フレアがまさか王女だとは思いませんでした。夜に行方不明になる王女なんて私くらいしかいないと思っていました。
「姫様、ジョイア陛下から伝言です。執務室にくるように、とのことです。」
と、ヘカテリア王国の情報とまさかの形で再会することになったフレア、そして、魔法のことを考えていると侍女に伝えられました。
「わかりました、今から行きます。」
そう返事をして私は王城の執務室に向かいます。
「ルナ、ヘカテリア王国との正式な首脳会談の日程が決まった。」
執務室に着くなり、お父様にそう言われました。
「それでだ、ルナにも首脳会談に同席してもらう。」
「…それは何故なのですか?」
「先方の王女がルナに是非会いたいと言っているのだ。もし、ルナが嫌であれば断るがどうする?」
「行きます。」
私はその誘いに迷わず乗ることにしました。私もフレアには会いたかったですしね。
さて、それから幾日か経ち、首脳会談の日になりました。場所はフレアと再会したあの砦です。今回は正式な会談なため、私も不服ながらドレスを着用しています。
私たちが待っていると、どうやら、先方もこの砦に到着したようです。扉が開き、金色の髪に新緑色の瞳を持った男性とドレスで着飾ったフレアが入ってきました。フレアと一緒に入ってきた、ということは恐らくこの男性がヘカテリア王国国王、フェナンタ・レラ・ヘカテリア陛下なのでしょう。
「私がヘカテリア王国国王、フェナンタ・レラ・ヘカテリアである。そして、こちらが我が娘でヘカテリア王国第一王女、フレアニア・フィア・ヘカテリアだ。」
そうヘカテリア王国国王、フェナンタ陛下が言うのを合図として、我が国が諸外国との連絡が取れなくなって以来初めて、そして、この世界になってから初めての首脳会談が始まりました。
無事、首脳会談が終わり、そこで新たに決まったことは以下のことでした。
1. エクスマキナ王国とヘカテリア王国は相互不可侵条約を締結すること。
2. 互いの王都に、外交窓口として大使館を置くこと。
3. 互いの軍事状況において、情報交換を行うこと。
大きいのはこの三つでしょうか。全体を通して、互いに敵対しないことを前提としたものになっています。特に、互いの軍事状況の情報交換なんて通常は絶対にしません。しかし、この状況であると、互いに戦争をする余裕なんてない、との共通見解の元にこれが結ばれました。その裏には我が国が魔物討伐などのノウハウがなく、その情報が欲しい、との意図があると考えています。逆に、ヘカテリア王国側の思惑は読めません。私的には軍の技術に興味があると読んでいますが、それも確定的ではありません。
その他にも互いの国民について、行き来の管理方法だったりの確認もありました。しかし、そんな中で私が一番興味があったことは別のことです。
『互いの学院で交換留学を行う』
これです、是非とも行きたいです。魔法の技術に興味があるのはもちろんですが、その技術を私の研究に使えないかも気になります。私の知りたいこともわかるかもしれません。本来の目的には文化交流の面もあるようですがそんなもの関係ないです。
「交換留学に私も行きたいのですがよろしいですか?」
ということで、帰国後、お父様にその旨を直談判してみました。
「もとからそのつもりだ。というよりもこの交換留学自体、実はヘカテリア王国のフレアニア王女が言い出したものらしくてな。ルナを指名しているのだ。」
どうやら、フレアの提案によるものだったようです。つまり、私はもうすでに交換留学に行くことがほぼほぼ決まっていて、その相手はフレアである、ということです。
正直なところ、すごく嬉しいです。フレアといっぱい話ができそうですし、魔法について知ることもできそうです。もうすでにその日が楽しみになっています。
それから一か月後、交換留学のために出発する日が来ました。
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