第4話:フレア王女とヘカテリア王国

 ここは魔法文明の発展した世界に存在したヘカテリア王国。この国は魔法とともに発展し、日夜魔物との争いの絶えない国であった。しかし、そんな国も今は未曾有の混乱にあった。魔物との戦いどころではなくなってしまうほどに。


 ヘカテリア王国の国王、フェナンタ・レラ・ヘカテリアは王城の執務室で宰相であるクーニッツ・レガルタ公爵と騎士団長であるエラン・アーノルドからある報告を受けていた。


「まず、国内の状況ですが、現在確認できている範囲ですとまず、地形の変化があります。王都付近の丘陵地帯が平原に変わってしまっているのを確認しております。その他の変化については目下確認中となっております。」

「騎士団からは魔物の発生状況についてを。少なくとも王都付近については魔物の数に変化は現状確認できていません。騎士団及び、冒険者の活動も今のところ問題ないでしょう。ただし、国境線については現状情報が足りません。わかっていることは国境線付近を境に見たことのないような地形が見える、ということだけです。」

「ふむ…、やはり情報が足りないな。」


 結論は情報が足りない、ということであった。先の報告からわかったことは国内の地形が変わっているということ、魔物の生息数自体に変化はないということ、そして、国内以上に国境線付近を境に大きく地形が変わってしまっているということだ。


「今は情報が足りぬ、騎士団の動員及び、冒険者への依頼を行い少しでも情報を集めるべきだな。他に…」


 フェナンタが言葉を続けようとしたとき、執務室のドアが盛大な音を立てて開かれた。そこにいたのは、


「父上!ご報告したいことがございます!」


 ヘカテリア王国の第二王女で、じゃじゃ馬娘、そして、王国一の魔法の天才、フレアニア・フィア・ヘカテリアであった。


***


 さあて、こう言ったはいいものの、重要そうな話をしているところに割り込んでしまった感じがするなあ。あ、父上が頭を抱えてる。


「なんだ、フレア?今この国で起きた異変についての報告とその対策を検討しておったのだが、それよりも重要な話か?」

「はい、その話題について一つ、重要な情報を持ってきました!」


 私は昨夜、ルナと別れたあと、まっすぐに王城の自室へと戻って寝た。で、今さっき起きて着替えたあとにここに来たって訳。


「本当か!?今はとにかく情報が欲しいのだ、何をしていたのかは怒らないから述べよ。」

「怒らないんですね!わかりました!」

「怒られるようなことをしたと自白したな。」


 父上に呆れ気味に言われましたがそれを無視して続ける。


「まず、私は昨夜、いつも通り魔物狩りに行ってました!今回は西の森の方ですね。魔物の群れを殲滅し終わったくらいかな?なんか意識飛ばしちゃって。で、目を覚ましたらなんか星の数が増えてたんですよ!で、気になって探索魔法を使ってみたらなんとびっくり、見覚えのない都市が広がってたんですよ!で、一瞬戻ろうとも思ったんですけどね、好奇心に負けてそのまんまそこに行っちゃいました!」


 そこまで報告を聞いて、父上、クーニッツ公爵、エラン騎士団長はどうすればいいんだ、と言わんばかりの顔で私を見てきます。少しすると、父上が口を開きました。


「つまり、昨夜は勝手に王城から抜け出して魔物狩りしに行っていた、ということか?」

「はい、そうです!」

「あとで説教するからな。」

「怒らないって言いませんでしたか!」

「まあよい。で、その都市に行った、ということか?」

「え?あ、はい、そうですね、そこで、可愛らしい子と会いましたよ!ルナモニカ、あっ、ここからはルナって呼びますけど、そう名乗っていました。エクスマキナ王国に住んでいると言っていましたね。どうやらヘカテリア王国については知らないようでした。あと、私が魔法を使っていたことにあり得ないとかまあ、すごくびっくりしていた感じでしたね。」

「エクスマキナ王国、、、か。知らぬ国の名だな。」


 エクスマキナ王国、その名前に誰もピンと来てないのを感じる。私も知らないし。父上たちも知らないみたい。そこで、父上は聞いてきました。


「少なくとも、西にエクスマキナ王国が存在する、ということは確かなのだな?」

「はい、私が見間違いとかしてなければ存在してると思います。」

「数少ない手掛かりがそれか。フレアからの報告じゃなければ信用しきれるんだが。」

「そんなに信用できないんですか!?」

「ああ、よく行方不明になる王女だからな。」


 痛いところを突かれてしまった。否定できない…。


「とはいえ、現状では数少ない手掛かりだ。本当に国として存在するのならば、使節を送って国交を結ぶことを模索する必要がある。」

「ふむ、それについては私も同意だ。エクスマキナ王国についての情報も必要だからな。」


 と、そんな感じで使節を送って外交をしよう、という話になっていく。


「それじゃあ、私は知ってる限りの情報を話したので戻りますね、昨日回収できた魔物の素材を仕分けしたいので。」

「待て、フレアニア王女。」


 捨て台詞を吐いて部屋に戻ろうとすると急にかしこまったような言い方で父上に呼ばれた。あれ?なんか嫌な予感が。


「説教をすると言ったな?では説教の代わりにこうしようではないか。せっかくだし、エクスマキナ王国への使節の一人として向かってもらおうではないか。身分は王女、としてだな。」


 やられた。見事にしてやられた。


 そうして、私は王女というお堅い立場で使節としてエクスマキナ王国に向かうことが決まってしまったのであった。

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