第2話:二人の王女はここで出会う
「ねえ、貴方は魔法使いなの?」
確かにそう目の前の女の子は聞いてきた。確かに私は魔法使い。でも、これはどういう意図なのかがいまいち掴みづらい。だって、私の国の国民は貴族、平民問わず程度はあれど魔法が使えるのだから。
「魔法を使えるということを魔法使いの定義とするのなら確かに魔法使いだけども…。」
そう答えると、目の前の彼女は少し目をパチパチさせた後に目を輝かせた。まるで信じられないようなものを見た感じだった。そしてこう言った。
「本当に!?でも、なんで!?この世界で魔法なんて使えないはずなのに!?」
「え?使えないの?どういうこと?」
つい口に出してしまった。すると、目の前の彼女はなおさら信じられないという顔になった。
「逆になんで使えるのですか?魔法は何百年も前に消えたはずなのに。」
「待って、待って、何か勘違いしてない?」
彼女はそれを聞いてまた目をパチパチさせた。
「勘違い、ですか?可能性としてはありますね。少し互いの認識について確認しましょう。その前に…。」
そこまで言って、少し間を置いた。そして、ジト目を私に向けたかと思うと、
「あの、その、どいてくれませんか・・・?」
そう言われた。そこで今の私たちの状態を確認する。私が彼女の上に乗っている、所謂、押し倒している、という状態だった。それを認識したとき、顔が熱くなるのを感じ、飛び退くように距離を取った。
「うう、ごめん?気づいてなかった。大丈夫だった?」
取り繕うように彼女に聞いた。
「大丈夫です。互いの認識を確認したいならまず自己紹介からしましょうか。私の名前はルナモニカ、ルナと呼んで頂ければ大丈夫です。」
彼女はルナ、そう名乗りました。
「先に名乗られたなら私も名乗らない義理はないかな。私の名前はフレアニア、フレアと呼んでちょうだい。」
***
箒星の彼女はフレアと名乗りました。改めて彼女の顔を見ます。金色の少し癖のある髪と、強い意志を感じさせる薄い青色の瞳を持っています。
「ええと、では、フレアさん?まず何から確認しましょうか?」
「んー、そうねー、まず一般常識について確認していいかな?あ、あと私のことは呼び捨てでいいよ。私も貴方のことルナって呼ぶから。」
そうフレアは言ってくれました。正直少しありがたかったです。
「まず、私から。私の住んでいる国の名前はエクスマキナ王国です。」
「知らない国の名前が出てきたなあ。あ、私の住んでいる国の名前はヘカテリア王国だよ。」
ヘカテリア王国、彼女は確かにそう答えました。私もそんな国の名前は知りません。フレアがこの国の名前を知らないように。
「知らない名前ですね。どのような国か聞いてもいいですか?」
「ヘカテリア王国は魔法と精霊を信仰し、魔法をもとに発展し、そして、魔物との戦いを日々繰り返している国。そのお国柄、魔法の能力は重視されがちなんだけど私ってすごいよ?だって王国一の使い手なんだから!」
どや顔で私よりはあるであろう胸を張ってそう言われました。なんか少し腹が立つような…。って、魔法!?やっぱり魔法があるの!?
「フレア!待って、魔法があるんですか!?」
「それについて答えるのもやぶさかじゃないんだけど、その前にルナの国のことについて聞いてもいいかな?」
そうフレアに言われて冷静になりました。
「すみません、失礼しました。エクスマキナ王国は世界でも科学技術においては随一の国です。しかし、23年前に起きた大戦で大損害を負いました。今では復興が進みましたが、まだその傷跡は残っています。」
「へえ、そうなんだ。科学技術、ねえ。どんな感じなの?」
「そうですね。今の最先端の技術だと飛行機や車や化学肥料があります。私も目下様々な研究をしています。例えば蒸気機関に代わる新しい動力の発明とか、例えば新しく開発された物質の検証とか、他にも」
「急にすごく早口になったね、好きなの?」
そう言われてつい私の悪い癖が出ていたことに気が付きました。少し恥ずかしいですね…。
「我を失っていました、すみません。そうですね、好きです、大好きです!答えたので次は魔法についても少し聞いてもよろしいですか?」
私は謝ってから質問に答えると同時に知りたかった魔法について聞いてみました。
「そうだねー、魔法とは私たちの持っている魔力と世界に存在している魔素を使って精霊を介して起こす現象のこと。あなたの国にはないの?」
そう答えられました。
「そんな概念知りません。正確には、それらしきものの痕跡が残っている程度です。もしそれが本当に実在するのならばすごく気になります!」
私はテンション高めにそう聞いてみました。
「んー、話したいし気になる情報もあるのだけど、もう明るくなってきそうなのよね。戻らないと父上に怒られちゃうかも。」
「そうですね、私ももうそろそろ寝ないと明日に影響が出そうです。今日はこれでお開きですか?残念です。」
本当はもっと話したいのに、その思いをつい口に出していました。
「そうだね、もっと話したいのは私も同じ。どこかのタイミングでまたここに飛んでくるね。」
「では、次に来たときはすぐそこの建物、私の今の住居かつ実験棟なんですけど、そこの入り口の扉を叩いていただけませんか?」
「わかった。それじゃあ国元に戻るね。また、会える日に。」
「はい、また今度。」
そうやり取りをするとフレアは落ちてきたときに使っていた箒を回収し、それに跨って日が出てくる方向に飛んでいきました。
「とても、不思議な体験でした。魔法だなんて、フレア、貴方とはもっと話したいですね。」
私は箒星が飛び去って行った後、つい、そう呟いてしまいました。
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