第1話:箒星と二人の王女

 フレアニア・フィア・ヘカテリアは地面の揺れによって手放していた意識を取り戻した。


「ほわぁっ!!何今の揺れ!!というかどれくらい意識飛ばしてたの!」


 私はそう言って空を見上げた。すると、ものすごい違和感に襲われた。なんか星の数が増えた?とりあえず何かが起きたのは間違いないかな。


「んー、どれくらい意識飛ばしてたのかも何が起きたのかもわからないし、一回王城に戻るべきかなー。」


 そう言いながら私は探索魔法を使った。すると、見覚えのないものが。


「あれ?こんなところに街?というか都市?」


 そう、そこには本来はないはずの都市があった。私の知っている都市とは全く趣の異なる都市が。


「んー、気になる。すごく気になる。」


 少し考えた後に私自身の好奇心に従ってその都市の方向に向かって飛んでみることにした。決めたらすぐに行くべき!そう心に決めて剣をしまい、確保した素材を持って箒に跨ってその都市の方向へと飛び去って行った。


***

 

ルナモニカ・フォン・エクスマキナもまた地面の揺れによって目を覚ました。


「ん、やっぱり寝落ちしてました。今何時なんでしょうか。」


 壁に掛けてある時計を見ると12時を少し回ったくらいでした。それを確認するのとほぼ同時に何か形容しがたい違和感を覚えました。何かおかしいような、空気が変わったというか、とにかく言い表せないような違和感。


「どうしましょう、この違和感を確認すべきですかね?」


 少し考えて、違和感を確かめる、そう決めると壁に掛けてあった持ち運び用の小さいガス灯を取りました。それに火をつけた後、ガス灯を片手に外に出ました。空を見上げると、さらにはっきりとした違和感を覚えました。そう、どう見ても星の数が多いのです。


「なんで星の数が増えてるんですかね?すごくきれいではありますが…。」


 つい、無意識のうちにそう呟いてしまいました。そうしてしばらく空に見惚れていると東の方角から何かが飛んでくるのが見えます。まるで流れ星、いや、箒星のような、飛んだあとには青い軌跡を残しています。その光の始発点には何かが見えます。それは箒に跨った少女のような。まるで魔法使いのような。


「え?魔法使い?噓ですよね?」


 そう、それは私が探し求めてたものはそれなのです。そう思いながらも私は変わってしまった夜空とそこに突然現れ、空を駆けていく箒星に目を奪われていました。


 そうして見惚れたままどれくらい時間が経ったのでしょうか。不意に箒星の様子が変わりました。進む方向を変えたと思ったら青い軌跡が途切れ途切れになりだしました。まるでガス灯のガスがなくなりかけているときかのように。そして気が付きました。その箒星が落ちてきているということに。


「うわあああああああああああああああああ!避けてええええええええええええええええ!」


 そんな悲鳴が聞こえたときには手遅れでした。相当なスピードで突っ込んでくる箒星はもうすでに避けられる位置にありませんでした。


「〈エア・クッション〉!!」


 その声が聞こえると同時に箒星と私はもみくちゃになるように転がっていきました。


***


 確認した都市が目視できる場所までたどり着いた。街自体はかなり整えられているけど、やっぱり私の知っている都市とは全く違う。まず、魔力の痕跡が全く感じられない。それなのに明かりが点いている。他にも気になることがあるけども一旦置いておいてさらに進んでいく。


 王城らしき立派な建物を少し過ぎたあたりで不自然に一つだけ明るいものが見えた。それを確認しながらも都市上空を通り過ぎていく。


「まあこれくらいでいいかな、この都市のことは父上に報告すべきかな、うん、そうしよう。」


 そう言って王都に帰ろうと方向を変えたくらいで急に魔法の制御が崩れる。急に飛行が安定しなくなる。


「ちょっと待って、やばいやばいやばい、このままだと落ちちゃうううう!!」


 焦って叫んでしまったけれどもそれでも降下は止まらない。魔法をとにかく安定させることを優先していて気付かなかった。もうすでに高度はだいぶ落ちており、地面が近いということに。そして、その落ちていく地点にさっき見えた明かりが見える。それを手に持つ少女の姿も。


「うわあああああああああああああああああ!避けてええええええええええええええええ!」


 そう叫んだけれどももう避けれるような位置ではない。あっ、だめ、このままだとぶつかる。せめて衝撃だけでも和らげないとまずい!!


「〈エア・クッション〉!!」


 そう言って魔法で風の防壁を作り出して衝撃を和らげる。しかし、止まり切れずに少女を巻き込んで転がって行く。


 そして、気が付くと、銀髪で黒い瞳を持つ、可愛らしい少女の顔が目の前にあった。その少女と目が合ったと思うと、口を開いてこう言った。


「ねえ、貴方って魔法使いなの?」

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