入学マッスル

登場人物


Aとナレーション






ナレ :春の筋肉が移り変わる頃、新たなマッスルボディがプロテイン並木を駆け抜ける。

 

A「大変だあ! ちょうどいい高さの高層ビルの壁を登っていたらこんな時間に!」

 

ナレ :彼はA、この春から筋トレスクールに通う筋入生きんにゅうせいである。

 

A「初日から遅刻では、広背筋こうはいきんを鍛えてくれた公園の鉄棒に申し訳がたたない!!」

 

ナレ :Aは己の脚力を最大限つかって走る、その速度は時速82kmとやや遅い。かつて「(適当な人の名前)」という者は鍛え抜かれた脚力を駆使して亜光速あこうそくで走ったと言われているので、その遅さがよくわかるだろう。

 

A「く、なんという急勾配きゅうこうばいの坂だ!! 肺が喜びの苦痛をあげているぞ!!」

 

ナレ :Aが登っている坂、なんと傾斜角度けいしゃかくどが89度もあるのだ。

 

A「登りきった、フフ、心臓がドキドキしている……これは、恋だな」

 

ナレ :恋の始まりを感じるA、しかし彼の前には更なる苦難が待っていた。それは

 

A「この海を泳いでいけということか!」

 

ナレ :どこまでも広がる海、澄み渡る瑠璃色るりいろ水面みなもはまるで新たな門出かどでを迎える人達を祝福しているようだった。

 

A「なんと美しき海か! 感動のあまり目からプロテインが溢れてきてしまう!」

 

ナレ :流れ落ちるプロテインと共にAは泳いだ。1km先の島まで5分で泳ぎきった彼の目の前に、また立ちはだかるものがあった。

 

A「ここを抜ければ筋トレスクールなのに、その素晴らしい筋肉を持つあなたは何者だ!」

 

ナレ「さっきまでナレーションをしていた私だ!!」


A「な、なんだってええええ!!」

 

ナレ「筋肉を鍛えあげればナレーションなぞ造作ぞうさもない」

 

A「流石だ、ではそこを通してもらいたい」

 

ナレ「ならぬ! ここを通りたくば私をマッスルで倒してからにしてもらおう」

 

A「なぜだ!」

 

ナレ「筋肉に……理由が必要か?」

 

A「はっ! その通りだ!! 馬鹿な事を尋ねた私を許してくれ!!」

 

ナレ「ああ!!!! 準備ができたなら! マッスルファイトの始まりだ!!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る