強く
犬のブリーダーをしているという客人が、一匹の子犬を置いて帰っていった。光が透き通るほどに真白な毛並。血のように紅い瞳。アルビノと呼ばれる、小さな命がそこにあった。
アルビノとして生まれた子犬は体が弱いことが多いらしく、飼育にも特別に気を使う必要があるため、買い手が見つからなかったのだ。
父がその子犬を引き取った理由は私にはわからない。ペットが欲しいと我儘を言った覚えはないし、すでに我が家には番犬のゴンがいる。
子犬はすぐに私に懐いてくれた。「おいで」と手招きすれば寄ってくるし、無邪気に尻尾も振ってくれた。
父に子犬の名前を考えておくように言われてから二日が経った。希少な存在に対し、おざなりな名前を付けるのが躊躇われ、辞書を手に、名付け親としての責務に苦心していた。
休日、昼食後の運動にゴンの散歩を思いつき、子犬も連れて行こうとしたところで父に止められた。アルビノは太陽が天敵だということを、私はそのとき初めて知った。
翌日、子犬の名前を初めて呼んだ。
強くあってほしい、その想いを込めて付けた名を、子犬は気に入ったのか、尻尾を振りながら、紅い瞳で私のことを見上げていた。
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