真実

 私の右眼は虹彩が薄い。俗にオッドアイと言われる存在で、左右の色の違いは微々たるもので、家族以外にそれを知る人物は一人しかいない。

 別にコンプレックスはないけれど、私はたまに眼帯を付けて家を出る。昨日は苦手な授業の多い金曜日だったので左眼を、休日の今日は右眼を覆っている。


「仮病? それともファッション?」


 家を出て間もなく、真実を知る人物がそんなことを言ってくる。今日は彼女と買い物に行く予定だ。駅で待合せの約束をしていても、道中で合流してしまうのは家が近いため仕方がない。


「どっちでもないし」

「昨日は左眼だったよね? そろそろ本当の理由を教えてよ」


 今日は私の右側を歩いてくれる彼女に、私は観念したように白状する。


「何かが違って見えるのかと思って」

「……それで、昨日と何か違って見えるモノはあった?」

「今のところ何にもなさそう」


 私がそう言うと、隣を歩いていた彼女の足がぱたりと止まる。


「私、髪切ったんだけど」


 私の稀有な瞳は、どちらも節穴であることが彼女によって証明された。

 必要のなくなった眼帯を外しながら、私は彼女を両方の瞳で見つめてこう言った。


「似合うよ」

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