二人

 週末は大抵彼女の部屋で寝起きをしている。土曜の夜に駅で待ち合せをして、近くのスーパーで夕食の材料を買い込んだ後、彼女の部屋に上がり込む。

 夕食は彼女の好きな豆乳鍋だった。料理をするのは僕の役目で、彼女はその間、荒れた部屋の片付けをする。一週間で魔窟と化した部屋をグループ魂の「本田博太郎」を歌いながら小奇麗な部屋に生まれ変わらせる彼女は、未だに本田博太郎が誰なのかを知らない。

 鍋をつつきながら、彼女の好きな海外ドラマを見る。二話見終わったところでお風呂に入る。ベッドに横になりながら三話目を見る。僕はその途中でいつも眠りに落ちる。夜行性の彼女は僕が寝た後、ドラマを止めて、本を読んだりしているらしい。

 彼女が愛用しているシャンプーは髪質の硬い僕の髪には合わないらしく、翌朝起きるといつも酷い寝癖がついている。


「いいね!今日もダイナミック!」


 不細工な僕にカメラを向ける彼女の笑顔が、日曜日の始まりを教えてくれる。


「……今日の予定は?」

「ドラマの続き見る!いちゃいちゃするのはその後!」


 彼女の要望に応えるべく、僕は洗面所へと足を向ける。背中に纏わりつく彼女を引き摺ったまま。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る