おひるごはん

 耳付きサンドイッチを頬張る私を隣の彼女が見つめている。何を見ているのかと問い掛けようにも、私は咀嚼に手一杯で声を発する隙間がない。彼女もまた、口角最大で噛り付いたホットドックに苦戦しており、何も言えない様子だった。

 並んでベンチに座り、昼食を食べていただけなのに、気が付けば互いの咀嚼音で牽制し合う、妙な緊迫感に包まれていた。

 やがて、私よりも僅かに早く飲み込んだ彼女が、先手を打つように口を開く。


「一口ちょーだい」


 私は小さく嘆息してから、まだ口を付けていない面を向けて、彼女の方にサンドイッチを差し出すと、彼女は亀のように首を伸ばして、私の齧った跡を更に抉るように、その中心部を齧り取っていった。


「私、パンの耳は食べない人だから」


 私のメインディッシュを飲み込んだ彼女に悪びれる様子はない。


「私のも一口あげるから怒らないでよ」


 今度は彼女が自ら齧った方を向け、私にホットドックを差し出してきた。私はまた小さく嘆息してから、彼女の手首を掴み強引に向きを変えると、まだ真新しい反対側から彼女のメインディッシュに齧りついた。

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