No.004 博打

 発射管から勢いよく飛び出した2つの魚雷は海中を突き進み、それぞれ異なる船の腹に激突した。そして、弾頭に取り付けられた信管が作動し海中で爆発した。その衝撃で、海面が持ち上がり巨大な水柱が上がった。


「・・・命中音、確認」


 聴音機を耳につけていた狭域測音長ソナーのイラ・ハーゼルが、自身の目の前にある機器を操作しながら報告してきた。


「よし・・・、広域測音長レーダー。 ライト・クルーザーか?」


「いえ、戦艦バトルシップです。 バトルシップのスクリュー音が聞こえてきません」


「艦長。 ライト・クルーザーは、進路そのままで増速中!約50秒後には、真上を通過する予想です」


「分かった。 戦術長エル砲術長メルの2人に火砲の使用を許可する、一撃で沈めてやれ」


「「了解」」


 すると2人は、座っている椅子ごと後ろに移動して行き、発令所後方にあるたくさんのモニターが壁に設置されている戦闘指揮所CICに移動した。


__________


 そして、全ての電源を入れて机の下にある遠隔射撃装置リモート・トリガーを取り出して握った。


航海長マーセル、急速浮上。 副艦長ホーキンス、全主砲発射準備!」


「急速浮上、開始! ベント弁、開け!」


「1番主砲塔と2番主砲塔、戦闘準備!」


 海面に艦首が飛び出して叩きつけるように着水すると同時に、格納されていた主砲塔が甲板に展開された。


「全主砲塔! 砲弾装填完了、装薬装填完了!」

「撃ちまくれ!」

「全主砲、撃ち方始め!」

「ぅてぇー!」


 砲術長から艦長と副艦長、戦術長、そして最後に砲術長が順番に号令をあげた。


 海面に浮上しそれぞれが声を上げて砲弾を発射するまでにかかった時間はおよそ30秒。そして真上を通過しようとしていたアトランタ級軽巡洋艦の1番艦アトランタは、突然浮上してきた潜水艦になす術なく最重要区画バイタルパートを貫かれてあえなく轟沈した。


__________


『クソ! 日本軍の攻撃だ!』


『あんな化け物まで開発してやがったのか?』


『総員退艦!ウギャアァァァァァァ!!』


 側を航行していたボルチモア級重巡洋艦1番艦ボルチモアの艦内では、何が起きたのか理解する前に、アトランタが撃沈されたことに指揮系統が麻痺していた。


「静まれ! まずは救助が先だ、取り舵で近づけ」

「艦長! 魚雷接近音、確認!」


「面舵!」


「ま、間に合わない・・・!!」


 そしてボルチモアも、魚雷攻撃により海の底へ爆発音を響かせながら轟沈していった。

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超大型戦術攻撃潜水艦、異世界の海を征く! @12{アイニ} @savior1of2hero

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