第二話 二人の接し方
昨夜の顔合わせを終えて少し経った、5月5日の日曜日。
男二人には今まで広すぎた3LDKのこの家に今日から楯山親子が加わった。
自分自身の生活は特に変わらないだろうと感じながらも、これからの生活に少し不安を感じていた。
「とりあえず司、叶さんを部屋に案内してあげて。」
そう父に促され、叶さんを部屋に案内してあげた。
「ここが、叶さんの部屋です。」
「ここが...。ちゃんと私達を受け入れる準備をしていたんだね。」
確かに自分は父が再婚すると聞いて良い話だと思ったが新しい家族をきちんと受け入れるかどうかは、少し不安だった。
「結構広い部屋だね。」
「そうかな、普通の広さの部屋だと思いますけど。」
「私、お母さんと二人暮らしのときはボロアパートに住んでて、狭い部屋を二人で使ってたから。」
そうか、二人暮らしのときは大変な思いをしていたのだろう。
「でも、そのほうが気が楽だったんじゃないんですか?同じ家にこれから男ふたりが増えるので...。」
「別にそれはあまり気にしていないけど...。それより、どうして敬語で話してるのかな。」
そう聞かれれて、自分の中でやはりまだ現実味がないのだと感じているとわかった。それに比べて叶さんは最初あったときと違い、話し方が柔らかくなっていると思った。
「まあ、どうしてって言われてもですね。」
「ほら、また敬語使った。同い年なんだし、学校も同じでしょ。だからもう少し気楽に接していいよ。」
同い年で、同じ学校の同じクラスだからこそなんですが。自分は高校二年まで女と関わることがなかったのに。
「もし、気を使っているのならそんなのいらないけど...。」
なにせクラスで人気の叶さんだからこそ気を使わずに接することがハードなのに。
「気を使っている気はなかったのですが。敬語はやめたほうが接しやすいですか?」
「確かに、普通に喋ってくれたほうがこっちも落ち着いて話せるし。」
家族になるなら少しずつでもいいから、距離を縮めていかなければならない。
「わかった。じゃあ敬語は辞めるよ。」
「結構、あっさり切り替えるのね。」
「新しい家族だし、わかりやすく接してくれるから。正直あまりなれないと思うけど。」
自分たちがこれから生活する中で今まで経験したことがないことを経験すると思うから、色々考えていかないといけないな。
そう考えていた。
「とりあえず、部屋の片付け手伝うよ。たくさん荷物がありそうだし。」
「なかなか優しいじゃない。じゃあ上にある段ボールからお願いしようかな。」
さて、片付けを手伝うといったものの女性の荷物なんて触っていいのか?少し緊張しながらも段ボールに手を付ける。
「そういえば学校は同じだけど、どう接していく?」
ああ、そうだ学校が同じだから確実に接し方に困ってしまう。
「そうだね、学校ではなるべく他人のふりをしようかな。そのほうが俺も過ごしやすいし。」
「そう?私は別に気にしないけど、司くんがそうしたいのなら。それでいいよ。」
そうして部屋の片付けとともに二人がこれから過ごしていくうえでの接し方を決めて日曜日を終えた。
父の再婚相手の連れ子がまさかのクラスの美少女だった @ayase-0914
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