第5話 或る夢
ここはどこかの部屋の中、右手のドアには白銀の騎士の騎士が一人、テーブルを挟んで反対には漆黒の鎧に身を包んだ男が見える。艶のある黒髪、綺麗に剃られた顎髭、それによってか歳は三十ほどに見えている。背丈も高く、顔だちも特徴的ではあるもののカッコいいと思ってしまう人であった。
「ミコト、よくやってくれたな。」
ミコトと呼ばれた白銀の騎士は一例する。その動き、一つ一つに品が感じられ、彼女の出自故なのだろう。
「はい、これでも貴方の妹なのですから。」
「ふん、血で血を洗う争いをした俺たちが共闘するなんてな。時代の因果には甚だ腹立たしい。」
「そうですね、私も貴方とこんなことをしているなんて信じられませんね。」
お互いに腹の内がありながらも協力関係にある彼らには少し不思議な感覚を覚えてしまう。仲が悪いだろうにこうして向かい合って一つの計画を成就せんと邁進するその姿には。
「こちらの準備は終わった。そちらの準備も進んでいるのだな?」
「ええ、問題なく。」
そうかと彼は彼女の言葉を信用していた。その信用に至るまでどんなことがあったのだろうか、今の彼らからは得られるものはなく、ただ周りが暗くなり始める。
「ミコト、お前を信じているぞ。我らの悲願の達成を――。」
電源が切れたテレビの様に視界は暗転し、遠くから木の軋む音が響いている。あちらへ帰る時間だ。
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