第47話

俺達は今の状況を踏まえ今後の方針を話す為、全員集めて宿屋の外の広場に集まった


「と、まぁこんな感じ」


現状の人型害獣騒動についてと討伐者役所での話を共有した


「取り敢えずレベリングも含め外出するのは最低限にしよう。外出する時はなるべく大人数で行動、互いに行動を把握しておく。こんな感じでいいか?」


ザックリとした方針だが全員頷いた


そして話は目下俺達が抱えているに焦点が移った


複数あるが、俺の中で1番問題なのは…


「まず、俺が過ごしてきた1周目から状況が変わり過ぎてる。人型害獣なんて現れた事もないし聞いた事もない。この先は俺の知識が当てにならないし、1周目より酷い状況になるかもしれない…」


沈黙が流れる


だがその沈黙を破ったのは意外にも初島だった


「それって何か問題ある?」


初島はコテンと首を傾げながら

普通に聞いてきた


「何かって…そんなの…」


問題しかないだろう、だって俺がなんの為にリセットボタンなんてスキルを選んで…


「確かに、問題はないな」

「あぁ、そうだな!」

「うん」


ほかの皆も同意する

違うだろ、そんな訳ないじゃないか

ただでさえ…起こる事が分かっていて、それでも俺は怖いのに…

さらに厄介な状況になるかもしれないなんて…


あぁ…もう、駄目だ

盗賊の時と同じような感情が俺の心を埋め尽くそうとしている


どうせ、お前らには…


「俺達には分からないってか?和泉が俺達に言ってない事があるのは分かってる、それでお前が苦しんでるのも分かってる。お前が言ってくれるのを待ってたんだけどな…」


まるで俺の考えを見抜いたかのようなセリフ

だがな…


「俺は言ったぞ…この先俺達は死ぬ。とてつもなく強い害獣野手によって」


だがその時のお前らの話をして、そこからどうやって死んで…俺がどうやって生きてきたか?なんてお前らに言って…


(耐えられるわけが無い)


そう、耐えられるわけが…

俺はハッとなり皆の顔を見る

俺は勝手に決め付けて突き放して抱え込んだ


2周目の最初の頃のように

どうせ…と


あの時でさえこいつらは…

信じられなかったのは俺、耐えられなかったのは拒絶される事

全てを話した時、皆が俺に何を思うのか?アグニに対してどう思うのか?諦めてしまわないだろうか?と怖かったのだ


だから彼らは子供だから、甘ちゃんだからと話さない理由ばかりをどんどん積み重ねていった


「言えよ全部。俺達は親友だろう?」


あぁ、そうだな主人公

お前なら、お前達なら大丈夫だよな

何せ。勇者とその仲間達なんだから…


覚悟を決め、俺は1周目の皆の最後とアグニについて話した


覚悟は決めたがやはり怖い…

こんな俺に失望してないだろうか?


「後4年ちょいか…」

「もっと強くなんなきゃな」

「私も治癒魔法使えるようにならなくちゃ!」


剛以外の3人が口を開く

なんだよその反応…


なんでなのか分からない

安心したのか?嬉しかったのか?

ただ俺の目から涙が一筋流れていた


「なんて言われると思ってたのか知らないけど、あんまり俺らを舐めるなよ?お前が正しい事なんて知ってる、だから大丈夫だ。一緒に乗り越えよう」


瞳の奥から追加の涙が流れようとしてくるが、俺は上を向いてそれを断固拒否する


「今まで頑張ったな」


俺の肩をポンと叩く

イケメンかよ、クソが!


込み上げてくるものを必死に抑え

数分間天を仰ぎ

ようやく落ち着いた


「うすしお〜?目が赤いぞ」

「和泉ちゃん泣いたんでちゅかー?」

「和泉くん可愛い」

「(無言で親指を立てる)」


非常に腹立たしい

お前ら覚えとけよ、あと剛その親指と満足そうな顔やめろや


だが、緩んだ空気はここで終わり

次の話は違う意味で深刻になりそうだから


付き合いの長い3人は空気を察した

1人だけえへえへ言ってる奴がいるが殴っていいだろうか?


「気を取り直して次の問題、山本をどうするか?だ。彼女は精神的に病んでる、このまま放って置く事は出来ないけど彼女のチームメンバーは全員死んだ。俺たちのチームに入るにしても確実にお荷物になる」


「和泉っ!!」


先程の穏やかな声から考えられない、殺気すら感じさせる剛の叫び

だが剛も俺が言わんとしていることを理解している

だから頭を掻いて

息を吐く


「言いたい事は分かる。でもそんな言い方あるかよ…、今1番つらいのは彼女なんだぞ?」


なんだ、考えて出した言葉がそれか?


「だから?仲間が死んで心を閉ざす精神力じゃ俺たちには付いてこれないって言ってんだよ」


急激な変化に初島はついてこられずあわあわしている

無理もない


「それでも俺がなんとかする」


「駄目だ」


「俺が彼女の心を救って、修行だって手伝う!!だからっ!!」


「本当にさっき俺の話を聞いてたか?これから俺たちは絶対に死ぬような奴と戦わなきゃならない!!少しでも時間が惜しい!なのに主力のお前が足でまといの介護だと?舐めるなよ」


「和泉っ!言い過ぎだ」


祐二の言う通り言い過ぎだと思う

それでも剛はこれくらい言わないと理解してくれないだろう


「お前っ!!」


剛が掴みかかってくる


「足でまといと俺たちの命どっち取るか聞いてんだろ!?」


「っ!!」


これは俺の本音

休日や時間がある時に山本の相手をするのは別にいい

でも剛の言いたい事はそうじゃない、俺たちのチームに入れて仲間として扱うと言っている


「それでもっ!!それでも彼女を救いたいと思うのはおかしいのか?」


「それはお前が山本を好きだからだろ?」


「「「「!!(和泉(くん)が恋心に気付いた!?)」」」」


4人が一斉にこっちを向く

一体なんなんだよ

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