第46話

マグさんと剛の中間地点くらいにシールドがあり、シールドから剛まではざっと2mほどあった

マグさんが拳を振り抜く直前、剛は何かを感じ防御体勢をとりながら出来るだけシールドから距離を取った


その判断は正しかった

マグさんの一撃はシールドに阻まれ魔力自体は霧散してしまったが、振り抜いた拳から発生した風圧のみで剛は3メートルほど飛ばされてしまった


は?開いた口が塞がらないとよく言うが本当に自分がそんな状態になるなんて思ってもみなかった


なんだ今の?詠唱がないってことは魔法ではない…よな?でも、明らかに魔力を使った攻撃だった

でだ、攻撃自体はシールドで防いだ?よな

なのにあの風圧…

シールドで魔力が霧散してなかったらあの風圧にも魔力が乗っていたのか?


考えるだけで背筋がゾッとした

マグさんは俺に敵対されると困る、と言った

困るだけで勝てないとは言わなかった、つまりはそういう事なのだろう


「ほんとにシールドが使えるとはね…それに判断も素晴らしい」


試すために今の攻撃をしたと?

本当のシールドじゃなかったら下手したら死んでるぞ…

剛と顔を見合わせるが、苦笑いする事しか出来ない…


「驚かせたようで悪いね…どうやら噂の人型害獣とやらは、Cランク討伐者すら殺すほど強いみたいでね?そんなのをEランクなりたての子供が撃退したと言っても信じてもらえないんだよ。でもシールドを使えるなら話は別さ、だからそれをちゃんと証明してもらう必要があった」


ん?今の言い方ちょっと気になる


「シールドの証明にあれだけの攻撃は必要でしたかね?」


俺の質問にマグさんの左眉がピクリと動いた


「んー、そうだね。私は和泉くん君を見た時ビックリしたんだ、身に纏うオーラというか雰囲気だね。それが並のものじゃない、君たち異世界人はこちらの世界に来てまだ1年そこらだと聞いていたんだがね?異世界人は皆君たちみたいにつよいのかな?」


あからさまな話の逸らし方、これはビンゴかもしれない


「どうですかね?マグさんはそれを確かめる為に異世界人には全員漏れなくさっきのとんでも攻撃をするんですかね?」


「んぐっ!?ゴホッ!ゴホッ」


俺の質問にマグさんが盛大にむせた


「はぁ…降参だよ、確かにさっきみたいな攻撃は必要なかった。シールドなんて特殊な魔法の使い手、世界中探したって見つかるか分からないんだ試してみたくなるだろう?で、君の要求は?叶えられる範囲なら応えてあげるよ」


元々前回の貸しで頼む予定だったんだ

それが貸しを使わず頼めるなら安いもんだぜ


「いえいえ、別に要求なんて…さっきのとんでも攻撃、あれのカラクリが知りたいなぁなんて。あれって覚えられれば誰でも使えますよね?」


少し挑発的に、あんたなら俺達に教えられるだろう?と問いかける


マグさんはまるで悪ガキのようにニヤリと笑った


「なるほど…ね。時間次第ではあるけど、君たちならいけるさ。むしろ覚悟するのは君たちの方かもしれないよ?」


こうしてマグさんに教えて貰う事が決まった


人型害獣の件については、俺達が伝えた外見の情報が翌日から広まっていた

まぁそれが伝わったからと言って何か変わるか?と言われたら怪しい

せいぜいそいつが人型害獣だと分かるのが少し早い程度


事実、先程マグさんが言ったようにCランク討伐者すらもやられている

しかもそれはこの厳戒態勢になってからの話だ

人型害獣は相手の強さを正確に把握し、的確に弱い相手から順に倒していっている

みたいな印象を受ける


さらに付け加えるなら倒せば倒すほど強くなっていっているような…

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