第45話

俺は今討伐者役所へと来てある部屋へと招かれた

いかにもといった感じの部屋に、いかにもという雰囲気のおっさんが立っていた


端には俺たちの対応をした職員が俯いたまま立っている

まぁ呼び出された理由も内容も検討はついてる

ただここからは交渉になるから剛は置いてきた


「すまないね、急に呼び出して」


おっさんは40歳くらいだろうか?

見た目は所謂イケおじといった感じ、渋い


「私はここの所長をやっているマグ=セルフィーだ」


マグさんは近付いて握手を求めてきた

さっきまで気付かなかったがこの人、かなりガタイがいい

それにこの圧、俺の事を試してんのか?


「俺の名前は和泉です」


相手に合わせるのは癪だが、逃げたと思われるのも面白くない

俺は目を見て握手をした


よくある思い切り握ってくる、みたいな展開にはならなかったが

マグさんはなるほど、と呟き手を離した


「その独特の名前に髪、やはり異世界人だったか。最近召喚されたと聞いてはいたが…」


この人から感じる魔力は中の下、初島と俺の間くらいと多くは無い

さっき感じた圧もそうだが、この人からは強者特有の雰囲気を感じる

この雰囲気誰かに似た…誰だろう名前が思い出せない…


「で?急に呼び出してなんの用ですか?」


わざわざ俺を呼んだ理由を尋ねると、端にいた職員がやってきた


「先日はうちの者が失礼な対応をした事、本当にすまないと思っている」


マグさんは自分の頭を下げながら職員の頭を掴んで下げさせる


この人は俺たちの事を見下してはいないんだろうか?

だがこの人がいい人だからと言って甘い顔する訳にはいかない


「別に謝って欲しくて言ったわけじゃないんですよ、危険だから警告してほしかった。それだけだったんですけどね…」


「確かにそうだ、その節は本当にすまなかった。こいつには職員は降格と減棒、1ヶ月の謹慎を言い渡している」


思ったよりもキツい処罰だけど俺はそんな事は求めてない


「仮にも討伐者役所のトップがそう何回も頭を下げるものじゃないでしょうに…」


「普段ならそうだが、君に我々と敵対されてしまうと困ってしまいそうだからね」


「!?」


まるで俺の力量を把握しているかのような物言い、この人とは初対面のはずだが


「流石に今話題の害獣をEランクが退けたなんて話は信じられなくてね、君たちの事を少々調べさせて貰ったよ」


チッ!やられたっ!!

こいつ俺達の事を調べ尽くした上で確認しにきたって事かよ、一体どこまでバレてる!?


「随分人が悪いんですねぇ?」


「いやいや、君は中々特殊な日常を送っていたようだね?聞いたらすぐに教えてくれたよ、なんせいきなり神官を脅してお金の前借りと部屋の指定?しばらく何もしてなかったはずなのに仲間を作って初級ダンジョンをクリアだってね」


ちょっと考えたらわかる事か!そりゃ教会と討伐者役所は繋がってる

でもその程度の情報なら…


「しかもなんだって?不思議な腕輪を大量に購入したとか?働いてた訳でもないしそんなお金どこにあったんだろうね?」


クッソが、こっちが本命か

裏ギルドとの関係性なんてバレていい事なんてねぇ…

それは皆にもだ、剛連れてこなくて良かった


にしてもこの人…いい人なんかじゃねぇ、とんだ狸だ!!伊達にこんなとこの所長はやってねぇ


「はいはい、分かりましたよ。俺の負けです、欲しいのは情報でしょ?でもこっちも貸しは1つですよ」


「それで充分だよ!ありがとう、私に出来る事なら力を貸そう」


思ってたよりは引き出せなかったが討伐者役所の所長に貸しを付けられただけで充分としよう…


俺は人型害獣の事と盗賊達が食われていた話をしてその日は去った


…はずだったのに


何故か数日後に外でマグさんと向かい合っている


あぁ…またしてもやられた

剛に連れられ来てみたらここでマグさんが待っていた


どうやったのか分からないが、ご丁寧に俺に連絡が入らないよう剛へと連絡を入れたみたいだ

人型害獣の話を詳しく聞きたいと

剛がそんなの断るはずもなく…


俺の時と同じように剛と握手をし、何かを納得した後


「大倉くん、シールドを張ってもらえるかい?」


「??はい、分かりました…我が魔力よ、盾となり、我が身を守りたまえ、シールド」


疑問に思いながらも剛は言われるままにシールドを張る


「ふんっ!」


マグさんは腰を落とし拳を構え一声気合いを入れる

すると、右拳に魔力が急激に集まっていく

何だ…あれ?


しかも魔力はくるくると円を描くように集まっていき、やがてそれは小さな渦のようになる


マグさんはそのまま右拳をシールドへと叩きつけた

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