レベリング編

第28話

寮の強制退去まであと1ヶ月となった…

元々の予定ではまだ皆と合流する予定ではなかった

つまり1ヶ月予定を先行出来る

ただし、先行出来るから余裕が出来たか?と聞かれると答えはノーだ

なんなら先行出来てしまったが故に当初の予定よりやる事が増えてしまった

このチャンスはなんとしても活かしたい


その中でも最優先となるのは討伐者カードの獲得

その為の条件は初級ダンジョンのクリアか試験の合格


試験には2種類ある

試験管との試合で実力を示すか、ある程度の威力の魔法を見せるか


魔法士は絶対数が少ない為、攻撃可能な魔法士はそれだけで優遇される

…のだが転移者でこの情報を知るものはいない


当初の予定では討伐者カードの獲得は諦めていた

初級ダンジョンのクリアにせよ試験官との戦闘にしてもクリアするだけなら余裕だ

でも討伐者カード発行時にはレベルの開示が必須、その時あまりにもレベルが低いと面倒な事にしかならないから


正直試験になると俺以外の3人は厳しいと思うので実質初級ダンジョンのクリア一択になる

最低でも20くらいまで上げないとまずい


元々取る予定じゃないなら取らなくてもいいだろ!と思うかもしれない

それの答えもノーだ


正規のルートで討伐者になり討伐者カードを手に入れる為には、ここからかなり遠い街にある討伐者予備校に1年通わないといけない。

1年通ってから筆記試験に受かると仮資格が得られる。

仮資格を得ると討伐者育成学校に通えるようになる、そこで更に1年通う

そこまでしてようやく年に2回行われる討伐者試験を受ける資格が得られる

そこで合格したら、晴れて討伐者となれる


ここで討伐者となれるかどうかで2年の差が生まれてしまう


ならさっさとレベルをあげておいたら良かったじゃないか?そう思うだろう


2年の重みよりレベルアップの重みの方がデカい

それは俺が「裏ギルド」で手に入れた呪いの腕輪ことパワーアップバングルの効果を知っていれば分かるだろう


ただここでいくつかの問題が発生する

まず、初級ダンジョンでパワーアップバングルを装備したままレベルリングをして、1ヶ月で20レベル到達なんて100%不可能という事

さらにはレベルアップだけでなく鑑定魔法習得の為の黙想に12時間取られるという事


しかし仮にそれらを達成するという事は傑を置いていくという事だ

いくらチームのメンバーと言い張っても怪我して動けない者を討伐者として認める事は出来ないだろう


効率を優先して進むのか

傑を待って皆でいくのか


これは俺だけで考えることでは無い

皆と相談して決める事にする


「皆さんお集まり頂きありがとうございます」


誰にも聞かれないよう俺の部屋に集まって話し合いをする事になった

勿論傑は来れないので、傑以外の4


「いや」「おかしい」


「なにが」


「なんでここに…」


2人は不思議な顔をしながらある人物の方を見る


「こんにちは」


その人物はさも当然かのように挨拶をする


「「こんにちは」」


釣られて2人も挨拶する


「じゃなくてー!!なんで初島がここにいんの!?」


ナイスノリツッコミ!

流石、祐二


「言ってなかったけ?」


「聞いてない」


ちょっとやだー、祐二くん顔こわーい


「初島の貰ったスキルが治癒魔法だから。以上」


「それだけ?」


剛は本気で首を傾げてる

祐二は考えるポーズになる、気付いたか?


仕方ない剛の為に説明してやるか


「この世界ゲームっぽいよな?」


「おう」


「でも回復薬って見たり聞いたりしたことあるか?」


「ない」


「つまり、そういう事」


「はっ!」


やっと剛も気付いたらしい


「それってすごい事じゃないか!!」


「いや…」


祐二は違う反応を見せる


「この世界に回復薬がないなら治癒魔法もない可能性が高い。そんな世界で治癒魔法が使えるなんて知られたら…」


「まぁ良くて、拉致られて幽閉生活。悪いと実験動物みたいに扱われたり、最悪だと解剖かな?」


剛はハッとした顔をする

初島はなんて感情なんだ?よく分からん顔してる


「ただ、剛の言った通り凄い力だ。幸いまだ使えないからバレる事はないけど、くれぐれも内密にな」


祐二も剛もしっかりと頷く

それに…


「最悪バレたら俺らが守ればいいんだ。だからそこまで深刻にならなくていい」


その為にも俺たちは正しく力を付けなきゃいけない


まず要点のみを選んで1周目について話した

そして、これから俺たちがやるべき事戦うべき敵についても説明した


「…っと、まぁこんなとこかな」


話を聞いた3人の表情はそれぞれだった

傑には事前に話をしている


「そもそもの話だ、リセットボタンなんて俺の妄想かもしれないし1周目と同じ事が必ず起こるとも限らない」


「現時点でも色々変わってる。俺が覚えてる限り矢島はあんなに強くなかったし、傑と戦ったりもしなかった。今時点でも歴史は変わってる」


それを変えたのは和泉自身なのだが、その事を知る者はここにはいない


「強制はしない。ここで聞いた事は黙ってて貰わないと困るけど、それだけだ…だから素直な気持ちを聞かせてくれ。俺と一緒に戦ってくれるか?」

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