第24話

――翌朝



天気は快晴

まるで神様が今日の戦いを待ち望んでいるような日差し


傑はしっかり寝れただろうか?

正直言って勝算はかなり低い、ギリギリの戦いになるだろう

でも傑なら…


恋愛関連ポンコツの和泉に女子と同じ空間で寝る男の気持ちなど分かるはずもないのだが、和泉の予想通り(?)傑はしっかり寝る事が出来た


「っす〜」「はよ〜」


剛と祐二もやって来た

傑は珍しく遅いな

おっ、きたきた


「おーい!傑ー!」


早瀬と一緒に来たのか

俺を見付けた瞬間、傑は駆け寄って来た


そして俺の1メートル手前でジャンプ

○イダーキックのように綺麗な蹴りを放ってくるが俺はそれをスっと避ける


「チッ」


「なんで朝っぱらから蹴りかますんだよ、しかも身体強化使ってただろ」


「ほんとこういう時の和泉嫌いだわ」


なんで怒ってんだよ!!

訳が分からん


「まぁまぁ、その怒りは違うやつにぶつけようや」


祐二が俺の肩をポンポンしながら傑を宥める

3人は顔を見合せて俺の方を見てはぁーと溜息をつく


その3人だけ分かりあってますよ

みたいなのやめて!?

俺、傷付くよ???


矢島に指定したのはとある広場

街中や寮で戦って被害が出るのも嫌だからね


中心の空間だけを残し円を作るようにクラスメイト達を集めておいた

何かの催しかと勘違いした街の人たちも集まってきていた


「おい、和泉っ!」


「言ったじゃん。面白くなるようにしたって」


どうせ潰すなら皆が見てる方が効果的だからね


「ほんとお前は…」


「性格悪いわ…」


「まぁ、そう褒めんなって」


「「「褒めてねぇよ!」」」


傑もツッコミしてる

良かった、昨日と比べると少し毒気が抜けたかな?あんな殺気だだ漏れで戦うといい事ないからね

早瀬がいい感じにしてくれたんだろう


「ほんじゃこれ渡しとくね」


傑に赤い飴を2つ渡す


「これが昨日言ってた奴か」


「そ、これが勝つ為の秘密兵器その2だ。こっちに関しては完全にぶつけ本番になるけど…使い方は覚えてるよな?」


傑に渡したのは裏社会でのみ流通するアイテム、その名は「桜」

名前から察せられるように先代の転移者たちが作ったものだが、副作用が強すぎる為流通しなかった

使い方は簡単、口に入れて噛み砕くのみ

効果は3分間の間身体能力が2倍になる

もちろん「裏ギルド」で買ったものだ


「あぁ…」


「なら使い所は任せるぞ、一応2個渡したけど極力使うな。どうなるか分からん」


「最悪だと、どうなる?」


「身体中の筋繊維がちぎれる。下手したら死ぬよりキツいかもな」


「分かった。どのみち身体強化も5分しかもたねぇんだ3分でケリつける」


10時をちょっと過ぎた頃、ようやく矢島がやってきた


「片山ああああぁぁぁぁ!!」


めちゃくちゃキレてる

こっわぁ

あれが矢島か、昨日はよく見れなかったけど見たことはあるような…


それより気になるのは矢島に付いてきてるギャルっぽい子

あれ、咲宮って子だよな?

皆の話だと捨てられたって…


「さっさと早瀬を返して貰おうかぁ??」


「は?黙れ死ね。お前のじゃねぇよ」


「あんま調子乗んなよ雑魚が!」


「粋がるなよ、弱そうに見えるぞ」


「ぶっ殺す」


完全に頭に血が上った矢島は大剣で斬りかかる

傑はそれをギリギリで躱す

まだ身体強化魔法は使ってない


「クッソはえぇよ、クソが」


身体強化魔法なしであれを避けたのは凄ぇけどかなりヒヤッとした


「我が魔力を以て、力を与えん、ストレングス!!」


一撃で仕留めるつもりだったのかあっさり初撃を躱されたことに矢島はさらに激怒する


「その顔だ…それが前から気に食わねぇんだ」


矢島の猛攻

大剣を振り回す

身体能力の差はあってもそんな大振りじゃあ傑は捉えられない

と思ってたら傑の意識が剣に集中した所で腹に蹴りを入れられる

モロに食らった傑は吹っ飛ぶ


上手いな

ヤンキーだから喧嘩慣れしてるんだろうか


「なんでぇ、そんなもんかよ」


傑はすぐに立ち上がる

だが背中を強打したダメージは抜けてないはずだし、ぶつけた時に切ったのか額から血が流れていた


「あ?守るので精一杯じゃねぇか」


傑は少しも表情に出さず矢島を煽る


「まさか、まだ本気出してねぇんだよ」


傑は木刀を構える

それは剣道の構え

その構えは恐ろしく繊細で1つの乱れも感じさせない構えだった


「そんなおもちゃで俺に勝てる訳ねぇーだろ!!」


「ぃやあああああぁぁぁ!!」


傑は剣道の時の掛け声を叫ぶ

本気の証拠だろう


矢島はまたも直進し大剣を振りかぶる

だがそれもフェイント、大剣を振りおろさずに傑の方に放り投げる

そして自身は傑の背後に


完全に取った!!確信した矢島は思い切りパンチを放つ


「死ねええぇぇぇ!!」


だがそれすらも読まれていた

傑は半身になり大剣に触れる事無く回避、そのまま流れるようにバックステップでパンチを避け矢島の手首を叩く


「コテエェェェェ!!」


「ぐっ!!」


木刀による打撃はモロに手首を直撃した

いくらステータスに差があってもダメージがあるはずだ


傑は追撃をせずに矢島が体勢を整えるのを待つ


まるで剣道の試合を見ているような

だが傑、それでいいのか?お前には制限時間があるんだぞ

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