第23話

その夜は寝れなかった

剣道の大会前でもこんな事はなかったのに…


和泉…俺達4人の中だと容姿では若干劣るせいでよくなんで一緒にいるのか?なんて聞かれる

そんな奴らには理由を教えてやらない


あいつは凄い奴だ

俺たちのリーダー的存在、剛

剛の言う事は正しい、あいつは常に正しい事を言う

まるで正義のヒーローだ

対して和泉は言うことを間違えない

正しいのとどう違う?と思うかもしれないが、全然違う

剛の言う通りにしたら正義のヒーローにはなれるが間違いがあるかもしれない

でも和泉の言う通りにしたら絶対に間違えないのだ


あいつがどれだけ異彩で凄いやつなのかはこの一言で充分

だから和泉が無理だと言えば無理なのだ

昼間は散々無理と言われたけど…

結局最後まで和泉は俺にやるな!とは言わなかった

つまりは可能性があるって事だろ?


矢島…元々あいつの事は気に入らなかったがそれだけだった

あいつが何しようと関係ないと思ってた


でもあいつは超えちゃいけないラインを超えた

咲宮…ギャルだが意外と気配りが出来るし何より可愛い

そんな咲宮の処女を奪ったあげく捨てた

山本…剛の想い人

矢島は山本の事も食うと言った

早瀬…性格と身体つきのギャップがエロい

だがそんな早瀬をこれから矢島は犯そうとしている


俺はハーレムが嫌いだ

ハーレムの女達が幸せだなんていうのは物語の中だけだ


俺はNTRが嫌いだ

無理矢理人の女を奪って自分のものにする?馬鹿言え女の子は嫌がってるに決まってるだろう


俺はレイプが嫌いだ

愛のない行為は許さない


だがなにより許せないのは

女を泣かせる奴だ


咲宮は泣いていた

山本も怯えていた

きっとあの後泣いていただろう

早瀬は手が震えていた

誰にも見られない所で泣いただろう


3人の女を泣かせた罪は重たいぞ?矢島


そろそろ矢島の部屋に早瀬が行く頃だろうか?

でも和泉が上手いこと助けてくれるだろう


正直怖い

勝てる気がしない

死ぬかもしれない

それでもこの怒りに嘘はつけない


怒りに震えていたらドアをノックする音がした

こんな時間に誰だ…


「やほ」


扉を開けるとそこには和泉がいた

いつもの様におちゃらけた表情をして


でもその肩には何故か…


「おい、何やってんだ」


「攫ってきた、戦いは10時からね。俺のせいにされても困るし早瀬引き取ってよ」


待て待て待て待て

情報量が多すぎる

だが何より


「手は出さないんじゃなかったのか?」


「手は出してないよ、足は出したけど。それに俺が面白くなるようにしただけだし」


たまにでる和泉の悪癖

いつもきっちりしてる癖に面白い事を見つけた時だけ無茶苦茶しやがる


「はい、あげる」


早瀬を俺の腕の上に乗せ和泉は去っていった


ふざけんな!って叫びたいが早瀬が目を覚ましたら困るから出来ない

しかも今お姫様抱っこのような状態になっているから尚更


起こさないようにゆっくりベッドの上に乗せなければ…


まるで泥棒のように音を立てずに歩く


「ん…」


だがそんな頑張り虚しく、早瀬は目を覚ます


「あ…」


「え?え?片山くん?なんで?」


和泉のせいだけどその事を教えたら怒られるよな、仕方ない…


「矢島のとこから(和泉が)連れ出した」


嘘は言ってない


「なんで!?そんな事したら片山くんや皆が!!」


こんな時に他人の心配が出来るなんて凄い子だな

こんな素敵な子が矢島の餌食になりそうだったと考えるだけで許せない


「大丈夫。俺が矢島をぶっ飛ばすから」


「無理だよ!矢島の強さは知ってるでしょ??」


「大丈夫」


俺の覚悟が伝わったのかそれ以上は何も言わなかった


「私…矢島に何もされてないの?」


驚き終えたのだろうか?一息ついたと思うと彼女はチラりと俺の顔を見ながら聞いてきた

うん、可愛い


「うん」


確証はないけど和泉が助けたなら確定だろう

俺の返答を聞くと早瀬の体が震え始める


「怖かった…怖かったの…でも由紀や皆を守らなくちゃって」


「うん。見てたよ」


やっぱり彼女は泣いていた

彼女は強いんじゃなくて強くあろうとしていた


だけど…


「早瀬さん…あの…そろそろ降ろしてもいいかな?」


あのタイミングで起きたから仕方ないとはいえあのままずっとお姫様抱っこしていた

流石に恥ずかしい


「えっ…あっ…ごめん!ごめんね!気付かなくて、すぐ降りるよ!ほんとごめん」


顔を真っ赤にして慌てふためく早瀬さん


「じゃあ、俺は床で寝るからベッド使って」


「え、いいよ!部屋に戻る」


「今戻ると矢島がいるかもしれない。俺と一緒も不安かもしれないけど信じてくれないか?」


「じゃ、じゃあお願いしようかな。でもベッドは片山くんが使って」


「流石に女の子を床で寝かせる訳には…」


しばらくそんな言い合いが続いた


「じゃあ2人で寝よ!」


夜のはずなのに彼女の顔が赤いのが分かった


「は?駄目だろ流石に」


「私とじゃ…いや?」


こんな事言われて断れる男はいるのだろうか?

いや、いないだろう


「嫌じゃないけど…」


「ならお願い。心細いから一緒に寝て欲しいのの」


ず、ずりー!!!

童貞だからって舐められてないか?


結局一緒に寝ることになった

途中まで心臓がうるさくて寝られないと思っていたけど、昼間の疲れもあってすぐに寝た


「ねぇ、寝た?」


早瀬は寝ている傑の顔を覗き込む


「マジで寝てるよ…意気地無し」


言葉とは裏腹に彼女の顔はどこか嬉しそうだった

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