第22話

「これで勝てないって!そんなことっ!俺達だって」


強くなってるんだって?


「あるよ、あるんだよ。レベル30の差ってのはそういう世界だ」


「レベルだけで全てが決まる訳じゃないだろ!!剣だけなら俺はっ!!」


本当に珍しい、これだけ感情的な傑は…

だからこそ危うい


「ちょっと2人とも待ってくれ!いきなり傑が光ったと思ったらなんなんだよ」


「俺たちにも分かるよう説明をしてくれ」


慌てて祐二と剛が仲裁に入る


「あぁ、ごめん。傑に渡したのはスクロールつって魔法適正の有無を無視して魔法を覚えられる物」


「は?マジ?」


「なんだ、それチートかよ」


「チートじゃないし、普通に知られてるよ。ただ値段が値段だから一般には広まってないだけで」


「お前そんなのどうやって…」


「2周目パワー(笑)」


「ふざけてる場合じゃ!それに値段がって…一体いくらしたんだ!?」


フゥ〜剛は真面目だね


「まぁそれは一旦置いといてさ、傑が今使ったのは初級身体強化魔法のスクロール。初級身体強化魔法は…使用中身体能力が1.5倍になるって魔法だ。傑もそれは理解してるはず」


「そうなのか傑?」


「おう。だからこれなら矢島にも勝てるって…」


「だから無理だってば。そもそも今の傑と矢島の身体能力は約3倍違う、下手したらそれ以上」


「3倍?なんでそんな正確にっ!」


「それは後々教える。傑の身体能力が1.5倍になったところで2倍以上の差があるんだよ?勝てる訳ない。しかも傑のは魔法だ、魔力には限界がある。つまり時間制限付きだ」


「じゃあどうすりゃいいんだ!!」


「取り敢えずは身体強化の持続時間を調べる、話はそれから」


身体強化の持続時間を調べる為に俺が借りてる広間で傑と組手を行う。本当はもうちょっと力が近い相手がいいんだけどこの際しょうがない


「そんじゃ、いつでも」


「ふぅ…」


傑は一息つく


「我が魔力を以て、力を与えん、ストレングス!!」


傑の身体の周りに魔力の膜が出来る


「いくぞっ!」


…5分後、傑は地面に寝転がり大きく息を吐いていた


「はぁ…はぁ…」


「持続時間は5分か、身体はどんな感じ?」


「急に…はぁ…全身から…はぁ…力が抜け…」


「それは魔力が底をついたんだよ、その限界1歩手前までが活動限界。ちゃんと体で覚えてね」


「いや、待て。いま傑の身体能力1.5倍だったんだろ?」


剛が唖然とした顔で聞いてくる


「うん」


「和泉お前のレベルは一体…」


「1」


「「「はぁ?」」」


寝転がっていた傑も飛び上がって叫んだ


「今はまだ説明が難しいけど、レベルだけが強さじゃないんだよ。これで少しは俺の2周目信じてくれた?」


「信じるもなにも…」


「和泉なら矢島に勝てるんじゃねぇのか?」


剛が神妙な面持ちで聞いてくる


「勝てるかどうかなら100%勝てるよ」


「なら…」


「違うでしょ、それは。今回俺はあくまで力を貸しに来ただけ。やるのは俺じゃない、そうだろ?傑」


「ごめんな、ありがとう剛。でもこれは俺がどうにかしたい」


傑の決意に剛は仕方ないと言った表情になる


「でもっ、俺は傑が殺されそうになったら流石に止めに入るからなっ!」


まさに正義のヒーローだ

剛のこういう所、危うさは感じるけど嫌いじゃない


それは俺にはない所で、俺が後に戻れないくらい悪に染まった時、剛ならきっと止めてくれると思うから


その後、傑には体力を回復する為にゆっくり休んでもらった


とはいえ昼間に魔力を空になるまで使っているので念の為、明日まで引き延ばそうか



――夜



寮の部屋で女を待つ男が1人


今夜、俺の部屋に早瀬がやってくる

この世界にやって来た時思った


俺はここに来る為に今まで生きてきたのだと!!


元の世界にいた時は、窮屈なルールに縛られ他の奴らと同じように矯正される


自由といいながら狭くて暗いレールの上を歩かされているような

レールを逸れればやれ不良だの、やれヤンキーだの


だがここは違う

本当の本当に自由だ!


誰かを傷付けても俺に勝てないからと見て見ぬ振りをする


女だって思い通り

あの咲宮だって喜んで俺に股を開いた

しかも処女だったなんてなぁ…

もう少し遊んでおけばよかったがまぁいい


前の世界では想像の中で女共をぶち犯すだけだったが、ここでならその夢を叶えられる


早瀬〜

細身に見えて出るとこは出てるんだよなぁ〜

シャハッ!あの身体をこれから俺の好きに出来るって考えただけで興奮が収まんねぇよ


コンコン


キタキタキタキター!!

シャハハハ!!

早くお前の身体中を舐めさせろ!!

早く俺に犯させろ!!


「入れ」


……どうしたなんで入ってこねぇ

あぁ見えて意外とウブなのかな?

シャハッ!!可愛いねぇ


「おい、入れ」


チッ!仕方ねぇ俺が迎えてやるか


「シャハハハ!よく来た…な?」


ドアを開けたそこには

早瀬が誰かに抱えられていた

暗くて顔は見えない


「てめぇ!何してんだ!!」


俺にこんな事してただで済むと思うなよ!

全力で殴りかかる

確かに全力だった


気付いたら壁に激突して腹には蹴られたような感覚があった


なんだこいつ強ぇ!!


足元を見ると紙が落ちていた

「早瀬は俺が頂いた。返して欲しくば明日の10時にここに来い」

裏面には片山傑の文字


片山…あいつは気に入らねぇ

もっと言うとあいつらのグループだ

片山、支、大倉…とあいつだれだっけあの影の薄いやつ


あいつらはあっちにいた頃から大した事ねぇくせにちょっと顔が良いだけで女にチヤホヤされてやがった


だからこっち来た時は仕方なくチームを組んでやったのにあろう事かこの俺を追放しやがった


あの時は周りの目もあったから引いてやったが今回は違う

てめぇの方から仕掛けてきたんだ!

心置き無くぶっ殺す!


「かぁぁぁたやまぁぁぁぁ!!」


獣のような怒号が夜の空に響いた

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