第20話

――異世界転移前(ある日の昼休み)



ゲームのイベントがあるとかで和泉が学校を休んでいたので、3人で屋上でご飯を食べていた


祐「あー今日も初島と話せなかった」


剛「また言ってら」


祐「いや、だって顔が良すぎるだろ」


傑「顔は良いけどそれだけだろ」


祐「そんな事ねぇよ!!」


剛「まぁそう熱くなるなって」


祐「天下のモテ男は余裕ですな」


剛「本当にモテたい奴にはモテないけどな…」


傑「うわ、キモ」


祐「センチな剛キモーイ」


剛「キモキモ言うなー!!」


傑「はいはい、まぁそう熱くなるなって(笑)」


剛「真似すんなよ(笑)」


傑「まぁでも祐二がこれだけ分かりやすいのに全く気付かん和泉ってヤバイよな」


剛&祐「マジヤバい」


祐「普段あれだけ色んな事に気が付くのに恋愛に関してはポンコツ極めてる」


剛「マジそれな」


祐「本当は4人の時も恋愛トークしたいけど和泉トンチンカンな事しか言わなそうで」


傑「それ。無意識に避けちゃうよな」


剛「そういう傑は好きなやつおらんの?」


傑「運命の人にまだ出会っていないからな」


祐「でたー(笑)傑の運命の人」


剛「傑はハーレムとか嫌いだもんな」


傑「ハーレムとか邪道過ぎるだろう。1人の人を愛す事こそが男ってもんよ」


祐「じゃあNTRとかレイプとか絶対無理やん」


傑「レイプなんて人のやる事じゃねぇ!!てかNTR?なんやそれ」


ふとした会話で傑にNTR物のAV(祐二の持ってたやつ)を見せる事となった


AVを見終わった後なのに製作者を皆殺しにするのでは?という程の殺気を身体中から発し、般若のような顔をした傑

この時、祐二と剛は2度と傑にNTRの話はしないと誓った



――そして現在



「あいつぶっ殺すわ」


今の傑の表情はあの時と同じかそれ以上のものになっていた


「でも俺らじゃあいつに手も足も出ないだろ」


剛は冷静に、だが悔しそうな表情で言う


「じゃあこのまま女子が全員犯されるの黙って見てろってか!?お前はそれでいいんだな」


傑はブチ切れたまま剛にも突っかかる


「そんな訳ないだろ…俺だって…」


女子の中には剛の想い人がいる…


「なら今立ち上がるしかねぇだろ、たとえ殺されてもな…」


「はぁ…」


祐二が大きく溜息を吐く


「そんな君達に良いアイテムをあげようじゃないか!これで和泉に連絡が取れる、1個しかないしそれで解決するか分からんけどどうする?」


祐二が取り出したのは「連絡紙」というアイテム


先代の異世界人達が電話の代わりにとなんとか開発したもので、現代では作れるものはもういないかなりの貴重品


使い方は連絡紙を半分に切って使う

連絡を取りたい方は紙に文字を書いて紙を燃やす

残りの半分を持ってる人の紙に書いた文字が浮び上がる

一方通行でしか送れないし1回しか使えない

それ故に貴重なのだ


和泉は最悪の状況を見越して祐二に1つだけ渡しておいた

まさかそれをこんな事で使う事になるとは…


「頼む。俺はあいつをこのまま見逃したら一生後悔すると思う」


傑の力強い眼、剛はなんとも言えない表情をしていたが仕方ない


「分かった」


連絡紙に「力を貸してくれ」とだけ書いて燃やす



――その頃和泉は…



丁度依頼の報告を終え、裏ギルドのボスに報酬を貰っている最中だった


「ほらよ、約束の物だ」


マジックバックを渡される

疑ってる訳ではないが現物を確認する

こればっかりは性格なので仕方ない


「……529、530っと。確かに」


呪いの腕輪530個にスクロールが4つか

かなり色付けてくれたんだな


「マジックバックは?」


「依頼人が大層喜んでくれてな、報酬が弾んだからやるよ」


「大盤振舞じゃん。やるぅ」


「お前は確かに依頼を達成した!完璧にだ!初仕事でここまで出来る奴はそういない、どうだ?俺の部下になる気はあるか?お前の腕なら大抵のものは手に入るぞ」


「勘弁、俺はあくまで討伐者なんでね。出来れば二度と世話になりたくない」


ま、正式にはまだ討伐者じゃないんだけどね

これ以上ここにいてもろくな事がなさそうなので、急いで帰ろうとすると鞄に入れていた連絡紙が発火する


発火といっても熱くないし紙が燃える事もない

発火は連絡があったという合図なのだ


祐二から連絡っ!!しかもわざわざ連絡紙を使う程の要件…


「力を貸してくれ」


意味は分からないが急がないと行けない事は分かった


「ドタバタして悪いな!!急ぐから、じゃあな」


「まぁ待てや」


「なんだよ!?」


「行先はどこだ?」


「王都…」


「貸し1つ」


「どう言う意味だ?」


「送ってやろうってんだ、どうだ?」


今の状況的には助かるがこいつらに貸しは作りたくねぇ…


「どんくらいでつく?」


「スグだ」


「スグ?」


俺は黒い布を被せられて視界が文字通り真っ暗になった


「死んでも貸しは返してもらうからな」


ははっと今にも笑いだしそうなボスの声を最後にひどい揺れが襲ってきた


「う"っ!!」


揺れが止まると乗り物酔いの非ではない気持ち悪さが襲ってくる


盛大にリバースしてようやく落ち着いてきた、

被せられていた黒い布を剥ぎ取ると、そこは裏ギルドではなく王都だった

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