第19話

だが実際そんな事はない


レベルが高いせいもあるが咲宮の魔法はクラスメイトの魔法士の中でも群を抜いていた

そもそも前衛は魔法士を含む後衛に攻撃をさせないのが役割である


数回攻撃するだけの間で崩れてしまう前衛の無能さを差し置いて、倒しきれない魔法士のせいにするのは自分が無能であると言っているようなものだ


事実、矢島のチームを和泉が指揮すれば中級ダンジョンの攻略など朝飯前


とは言えそれは討伐者の常識であり、この世界に連れてこられた転移者達には理解しえないものだった


「まぁいい、どうなろうとお前は追放だ!追放!!目障りだからさっさと消えろ!」


自分が倒しきれていないのは咲宮自身も分かっていた、でもやれる事は精一杯やっていたし…それに…


「わた…私は処女まで…」


咲宮はギャルなのに意外と乙女であった


「シャハハハ!!まさか処女だったなんてよぉ!血も出なかったから分かんなかったぜ!」


「だから…責任、責任取ってもらわないと」


「あぁ〜?責任ぃ?なんで俺が?お前の事をそこまで強くしてやったんだからそれで充分だろ?それに俺みたいに強い男に処女をあげられたんだから寧ろ光栄だろ?」


「そっ、そん」「あぁ!?」


「ヒッ」


咲宮の言葉を遮るように威圧する矢島

普段から田中と山田がされている仕打ちを1番近くで見てきた彼女にはそれだけで震えるほどの恐怖を与えた


「おめぇの価値は身体しかねぇ、けど俺はそれももう飽きたんだわ。それに他の奴らに俺の女みたいな態度取ってるのも気に入ら無かったんだよなぁ…」


まさに理不尽

元からクソみたいな性格をしていたが、大きな力を得たことによってそれが増長してしまった


「どうせ抱くならよぉ?初島みてぇな女の方がいいに決まってんだろぉ??」


「てめっ」「待て!」


騒ぎを聞きつけ剛達も様子を見に来た

初島の名前が出たことにより、祐二が特攻しそうになったが傑がそれを止めた


「だが最近あいつは姿を見せねぇ、無理矢理やってもいいが討伐者のカードとやらが貰えなかった困るんでな?」


逆に言えばそれさえ貰えれば襲うと言ってるようなものだ


「お願いします。なんでもしますからチームに置いてください」


咲宮は恥もなにかも捨て、縋り付くように土下座した


「お前もういいって」


矢島はそんな咲宮はゴミでも蹴るかのように蹴飛ばす


「うぐっ!!」


転がっていった咲宮には目もくれず大声で話す


「ご覧の通り我がチームは3人になってしまいました〜なので1人募集したいと思います〜」


下卑た笑みを浮かべながら女子を舐め回すように見て回る


「うちのチームは男3人だからなぁ、やっぱり女子がいいよなぁ〜、勿論可愛い子」


その目はもはや女を犯す事しか考えていない獣の目であった

それを察した女子達はあからさまに視線を逸らす


「まぁ、もちろん魔法士がいいんだけどなぁ〜。シャハッ!可愛い子ちゃんなら何でも許しちゃうかも」


矢島はもはや中級ダンジョンの攻略を諦めていた、ならばと討伐者となる事を餌に新たな女子いけにえを探すことにした


「ひっ」


矢島の狂気に帯びた視線が1人の女子を捉えた


「なぁ?山本?」


「ひっ…いやぁ…いや」


山本は震えながら小さな声で嘆く事しか出来なかった

そんな山本の元へ矢島はジリジリと近寄る


「強くてカッコイイ男って素敵だよなぁ?」


とうとう山本の元へと辿り着き顎クイをする


「いやぁ…」


山本の目からは涙が零れ落ちていた


「お前が嫌ならクラスメイト達はどうなるんだろうなぁ?みーんなまとめてヤッちゃうかぁ?」


耳元で山本だけに聞こえる声で言う

それと共に山本の涙を舌で舐め取る


「山本は俺のチーム入りたいよな〜?」


Yes以外の返答は許されない

ただの脅迫、だがこの場に矢島をどうこう出来る人間は存在しない


「はいり…」「まっ」「待って!!」


山本が返事をしようとしたタイミングで剛が待ったを掛けようとしたら、別の所から待ったが掛かった


「なんだー?早瀬」


声の主は早瀬はやせ 美菜みな

気が強く姉御肌の彼女は男子と女子両方からの人気が高く、一部の男子からは本当に姉御と呼ばれている

ショートカットが似合うスポーツ系少女だ


「私がチームに入りたいわ。由紀みたいな幼児体型より私の方がいいと思わない?それにダンジョンでも役に立てるわよ」


陸上部に所属している彼女は引き締まった身体をしているが出る所は出ている

校内トップ2のが強過ぎる為、埋もれてしまっているが早瀬も間違いなく美人である


「シャハ!確かに山本よりも楽しめそうだ。彼女にしたいランキングトップ2食ってやろうと思ってたがそんなのは後でも出来るしな」


矢島は舐めるようにして早瀬の身体を見る


「美菜ちゃん…ごめん…」


山本は早瀬の元へと駆け寄り泣きながら謝る


「大丈夫!大丈夫だから」


早瀬はそんな山本を安心させようと頭を撫でていた

そんな彼女の反対の手は震えていた


ただ1人それに気付いた傑は、今まで感じた事のないような怒りを感じていた


「あいつぶっ殺すわ」


「は?お前、さっき止めたくせに…」


2人は傑の顔を見て驚く

傑がここまで怒った姿は今まで1度しか見た事がない


そうあれはいつだったか…

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