第17話

依頼のターゲットは、アルカナ王国の宰相「ゲースニック=モルンテン」という男


1周目の時、Cランクチームになりアルカナ王に謁見した時ゲースニックはまた生きていた

つまりこの時点ではまだゲースニックは死んでいなかったって事だ


それが意味する所は1周目では違う人物が依頼を受けて失敗した

もしくはそもそも依頼自体がなかった


可能性としては前者の方が高いだろう

それなら俺のこの依頼は失敗するって事だろうか?

あーなんか憂鬱になってきた…

失敗確定の依頼…なんとか逃げ延びても「裏ギルド」に殺されるし、普通に見つかっても殺される


考えれば考える程嫌な想像しか出てこない

ま、でも今更逃げらんねぇしできる事を考えよう


今回の依頼で1番の難点は殺し方に制限があることだ

自殺に見えるように…ってそんなのどうすりゃいいんだよ


まずは徹底的にゲースニックについて調べる

それと同時に気配察知のスキル習得をする

気配察知のスキルは魔力を持った生き物の気配を感じ取る事が出来る

習得方法は色々あるが、自分以外の魔力を少しでもいいから感じる事が出来れば良い

コツ、というか要領は分かっていたのですぐに習得出来た


まずはゲースニックという人物について調べた

なるほど、暗殺依頼が出されるのも納得出来る

ゲースニックは相当な屑野郎だ

ゲースニックは宰相という立場を利用し、気に入った女性を無理矢理王城勤務にしてセクハラをしているらしい

セクハラと言うと可愛らしいがやっている事はほとんど強姦だ

だが下手に反抗したものは無理矢理犯された挙句、兵士達の慰安婦にされる

それが分かっているから誰も反抗出来ない


それだけでは飽き足らず国の税金を横領してるみたいだ


何故こんな男が宰相なのかと思うかもしれないが、理由は単純だ前宰相がゲースニックの父親だったそれだけ

父親は息子と違いかなり優秀でアルカナ王にも深く信頼されていた


そんな父親だったが子育てよりも仕事を優先してしまい、結果ゲースニックはグレて幼い頃から問題行動をよく起こしていた

ゲースニックがこうなってしまったのは自分のせいだとわかっていたからこそ強く言えず、ゲースニックというモンスターはそのまま成長してしまった


人間性に問題のあるゲースニックだったが、父親の優秀さと頭の良さはちゃんと引き継いでいた

ある時を境に真面目なったゲースニックは、持ち前の頭の良さを活かしすぐに次期宰相候補に登り詰めた

宰相候補となってすぐ父親が亡くなり宰相となった


亡き父の後を継ぎ立派に仕事をするゲースニックに周りの評価はうなぎ登りに上がり

3年も経った頃には宰相として磐石の地位を手にしていた


その頃から少しずつ女性へと魔の手を伸ばし始めた

悪い噂が流れたりはしたが、ゲースニックは絶対に証拠を残さなかった

ゲースニックは持ち前の頭の良さを全て悪事の為に使った

バレないラインを見極めながら少しずつ悪事の数を増やしていき、2年も経った頃には今と変わらない状態となっていたそうだ


その頃になってようやくゲースニックの本性が分かっても手遅れだった

宰相という仕事は相当な頭脳や経験がないとやっていけない

ゲースニックは屑野郎だが最低限国が崩壊しないだけの仕事はこなしている

そしてそれだけの仕事をこなせる後任はいない

さらには宰相としての仕事を完璧に把握しているのはゲースニックだけ

仮に明日ゲースニックが死んでしまうとすぐに王国が破綻してしまう

まさにゲースニックにとって最高の環境となっていた


でも実際はその状況を作り出したのはゲースニックだという噂があった

自身が宰相候補となったタイミングで前宰相、つまりは父親が死んだ

そのタイミングで見計らったかのようにゲースニック専属の私兵部隊が設立された

前宰相を殺したのはゲースニック自身ではないのか?と


とまぁ長々と話したが要はゲースニックは屑でクソ野郎という事だ

しかもこの情報は調べるまでもなくアルカナ王国の住民ならほとんど知っているものだった


ゲースニックがいなくなる事で起きる宰相不在の問題なんて俺には関係ない

俺はただ与えられた依頼をこなすだけ…


なんてカッコつけてはみるが「裏ギルド」にくる依頼、「裏ギルド」が依頼として受け付けるのは殆どが高額依頼だ

ゲースニックの被害者は相当数いるのだろうが「裏ギルド」の存在を知っていて尚且つ高額な依頼料を払える人物なんて…

と邪推している


まぁ依頼人が誰だろうと構わないけど、暗殺対象が善人ではないのがありがたい

殺すのに心が痛まないから…


1周目ではとんでもない額を集める為に度々「裏ギルド」の依頼を受けた

変な依頼もあったが1番多かったのは暗殺依頼だった

つまり人を殺すのは初めてじゃない


初めて殺したのは一般人の男性

一般人と言ってもとんでもなく女癖が悪いプレイボーイで、たまたま関係を持った相手が貴族の夫人で怒り狂った旦那が依頼を出したというものだった


その時の記憶は今でも忘れられない

感触、男の叫び声、血の匂い

全てが頭にこびり付いて離れなかった

依頼を達成してから1週間はまともに食事も取れなくなった


それでも俺には依頼を受けるしか選択肢がなかった

だから俺は殺す相手を徹底的に調べる事にした


依頼とは言え、俺の事情で人を殺すのだ

だから自分が殺したあいてがどんな人物だったのかそれを忘れないように…


いつからか殺すのに抵抗はなくなった

それでも調べるのはやめない

自己満足だが俺に出来るのはそれだけだから…


その後ギリギリまで日程を使い

ゲースニックの家での行動パターンを調べ尽くした


さぁいこう、依頼を達成しに

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