第9話

ならなかった…



――10年後



俺が転移した時の父と同じ年齢になっていた

この10年はさらなる検証と世界中の害獣の性質、行動パターン、戦闘パターンの調査を行った


俺はどれだけ初級火魔法を使っても中級火魔法を覚える事は出来なかった

同じく上級鑑定魔法も覚えられなかった


検証の結果、スキル、魔法共に適正と適正レベルみたいなものが存在していて適正があれば覚えられるがどこまで成長出来るかは適正レベル次第だと言う事が分かった


それと能力値の横についている( )の数字について仮説、というか大まかな推測が出来た

あれは、スキルや魔法を覚えるとそのスキルに関連した能力値が上昇するみたいだ

魔法であれば魔が格闘術だと力がみたいな

技と速の項目は何を示していてそれが上がるとどうなるのかはよく分からないけど…



旅の途中、魔法スクロールという物の存在を知った

それを使えば適正の有無は関係なく魔法が使えるようになる

極論だがこれを使えば、産まれたばかりの赤子にも魔法が使える


問題があるとすれば流通数が少なく自分が欲しいスクロールがあるか分からないのと、あったとしてもめちゃくちゃ高い事だろう

初級魔法のファイアですら1億ギルするらしい…


害獣についても大方調べ終わった

調べられていないのは一体だけ…


俺がリセットする為の準備も大方完了した

残すはあと2つ

そのうち1つはある人物を探す事、そもそもそんな人が存在するのかすら分からない

しかも探す為には上級鑑定魔法が必要

だから上級鑑定魔法のスクロールを手に入れないといけない

ここにくるまで10年もかかってしまったのは、資金集めに時間がかかったのが大きい

普通にやっていては何年かかるか分からなかったので「裏ギルド」と呼ばれる非合法のギルドの依頼も受けたりした


上級鑑定魔法、スキャニング

この魔法を使った人物のステータスを見る事が出来る

但し、自分より10以上レベルが上の相手には使えない

今の俺には関係ない制約だけどな


こうしてある人物を探し始めた

魔大陸にはおらず、アルカナ大陸へと戻る事となった

再び死の道を通らないといけなかったのだが、1度通ってきた事を説明したら許可がおりた

結果を言うと楽勝だった

15年前の事もあり、多少身構えたが何のことはなかった



そりゃあそうなのだ

大量のスキル習得によりステータスはかなり上昇しているし、害獣について調べ尽くしたのだから動きを先読み出来るんだから


リセットする為の下準備をしていたら、いつの間にか生きている討伐者の中で最強クラスになっていたってのは面白いもんだ


こうして15年ぶりにアルカナ大陸へと戻ってきた

いるかも分からないある人物とは言ったが、俺は2人の人物を想像していた


想像通り2人のうちの1人が探していた人物だった


これでやるべき事は全てやった

あとは…


その夜久しぶりに夢を見た

アグニよって皆が殺された日の夢だ

あの日俺誓った

絶対にアグニを倒すと!!


朝になった

その日はとても天気が良かった

まるで俺の門出を祝うかのような


俺はアグニと戦った平原へと向かう

今でもあの時の事は鮮明に思い出せる

あの時の悔しさも怒りも悲しみも、全て少しも色褪せていない


俺はアグニがいるであろう場所に目星を付けていた

あれだけの巨体だ

身を隠せる所は限られる


1箇所、2箇所、3箇所…探していくがアグニの姿はない


そして最後の7箇所目…いた!

あの時見たままのアグニがそこにいた


俺はファイアを数発当てる

アグニが俺に気付き追いかけて来る


離れ過ぎないスピードで逃げ広い場所へとおびき出す


相変わらずの巨体、だがあの時ほどデカいと感じない


「なぁ、アグニ。俺の事覚えてるか?」


アグニは笑った

その表情は俺の仲間を殺す時に見せたニヤリとした表情と全く同じものだった


前ほどの恐怖は感じない

だが今の俺では絶対に勝てないというのも分かる

じゃあわざわざ何をしにきたのか?


俺はゆっくりとアグニへと近付く

アグニは俺を踏み潰そうと足をあげる


今だっ!!


俺は全力でアグニの体を駆け登る

アグニは魔法を発動しようと足元に黒い魔法陣が浮び上がる、が


「遅せぇよ」


俺はアグニの顔面へと辿り着いた

そして自身の武器である槍でアグニの左目を突き刺した


アグニはまるで恐竜のような鳴き声を発する



ざまぁみろクソ野郎

これで思い残す事はない…


これを使うのは最初で最後


俺は一言呟く


「リセット」

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