re:はじまりの街

第10話

視界が激しい光に覆われる

この光、懐かしいな…


視力が回復してきて部屋が見えてくる

確かにこんな感じだった

俺はちゃんと戻れたのか?

この光でこの部屋って事は…


「和泉っ!!」


この声っ!!…


「おい、和泉!返事しろよ!!いきなりこんな訳の分かんねぇ………」


そうだ、あの時も最初に傑が見付けてくれた

早口で焦りながら捲し立ててくるが今の俺はそれ所ではない

流れそうになる液体を抑えるのに必死なのだ


「おい!和泉?和泉!?大丈夫か?」


目が潤んでいるのをバレないよう下を向いていたらめちゃくちゃ心配された


「いや、大丈夫。まだ眩しくてさ」


声が震えてるのがバレないようなるべく小さい声で話す


傑の叫び声を聞き付けて祐二と剛も駆け寄って来た


「おーい、傑ー!」「ここどこだよ!何が起きてんだ」


「いや、俺も分かんないんだよ」


「って、和泉もいんじゃん!あれ?なんでこいつ下向いてんだ」


「なんか和泉だけ光が強かったらしい(笑)」


ゲラゲラと笑っている

皆が笑ってる…


俺は…俺は戻ってきたんだ!

多分今はスキルを選んだ直後、どこまでリセット出来るのかと思ったらまさかここまでとは…


安堵する気持ちと、みんなに会えて嬉しい気持ちと、これからやるべき事の整理と、俺の頭は色んな感情でグチャグチャになっていた


取り敢えず状況の確認と整理をする為、体調が悪いと嘘をつき皆から離れた


「我求む、我が魔力を以て、我が能力を映し出せ、ステータス」


………


何も起きない

そりゃそうか、分かってはいたけどついさっきまで当たり前のように使っていた物が使えなくなるのは喪失感が凄い



それに…

また1年間瞑想かぁ…

愚痴っても仕方ない

この2周目は最短で鑑定魔法を覚えないと何も出来ないのだから


「皆はなんのスキル選んだ?」


変わってるなんて事はないと思うけど一応確認しなくてはいけない


「魔法適正(全)ってやつだな」

「剣術+ってやつ!強そうじゃん」

「俺はもちろん勇者だ!」


よかった、皆変わってない

この分ならあいつのスキルも変わってない筈だ


「和泉は?」


1周目の時、俺は皆に嘘をついた

それが最善だと分かってはいたけどどこか心苦しかったのも確か

でももう嘘をつかなくてもいい

それに皆にも協力してもらわないといけない


「リセットボタン。俺は異世界2周目だ」


「ぷっくっくっくっ」

「ひぃ…ひぃ…ひぃ」

「あーはっはっはっ」


爆笑された


「いや、冗談じゃねぇから!!」


まさか笑われると思ってなかった

言うのも結構緊張してたのだが吹き飛んだ


「和泉お前さっき様子おかしかったし、どうしたんだよそんな冗談言う奴じゃなかったろ」


「だから本気だって言ってんだろ!」


そんな調子で騒いでいたら周りの注目を集めてしまった


「転移者の皆様!!どうか私の話を聞いてください」


ケジリ司祭がやって来た

正直これ以上注目を集めたくなかったので助かった


俺の2周目が本当の事だと思わせるにはこれからケジリ司祭が言うセリフを先読みすればいいだけだ


だがそうしない

さっきはカッとなって反論したが、異世界2周目なんて言われてすぐに納得する方がおかしいのだ

仮にセリフを先読みした所で、テレパシーとか相手の考えが分かるスキルと思われるかもしれない


多少リスケは必要だが、皆に確実に信じて貰える状況を作るしかない

それなら…


皆がケジリ司祭の長いお話を聞いている間に同伴している神官を捕まえる


「寮の部屋を指定したい。あと俺だけが使える広間が欲しい」


「なっ、何を」


「異世界に連れてこられた上に帰れないって事は分かってる」


「何故知っている!!だがっ、貴様だけにそんな!」


「俺は大層気分が悪い。お前らのせいでだ、なぁ?分かるよな?」


ただの脅迫

俺のことはやばいやつだとでも思ってくれればいい

それよりも1年の間に出来るだけ環境を整えないといけないのだ

俺は皆と生き残る為ならなんでもする


あの悪夢までたったの6年しかない

レベルカンストした俺でも1番防御力の低い目にしかダメージを与えられなかった

その相手に6年で勝てるようにならないといけないのだから1分1秒も無駄に出来ない


神官達は観念して俺の「お願い」を受け入れてくれた

これで俺はやるべき事をやるだけ


結局「お願い」は部屋と広間、俺への不干渉、食事は部屋へ直接提供、支度金20万ギルの先払いの5点となった

初級鑑定習得までクラスメイトと出来るだけ関わりたくないから条件を増やした

広間は修行と訓練に使う

20万ギル先払いを求めたのも理由はある


マグニ!今度こそお前を倒して全員で生き残ってやるよ!

マグニとの戦いは既に始まっていた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る