第2話

異世界転移して1週間が経った元の世界に戻る事は出来ないと言われ

俺も少なからずショックを受けた

家族との仲は悪くなかったしもう会えないと思うと悲しい


ただ悲しい事ばかりではない

祐二と傑と剛、いつもの仲間が一緒に居てくれるからこの世界でも楽しく生きられる気がする


1週間過ごして思ったのはあまり地球と変わらないという事

50年毎に地球から召喚され続けているだけあって、食べ物や料理の名前もほとんど一緒だった

元々は一体どんな世界だったんだろうか?


マンションみたいな高層ビルなどはなく電気という概念はなかった

この世界には魔力が存在し、動力のほとんどは魔力だった

その為、電気や電力という概念が存在せず、レンジやパソコンみたいな家電は無かった

過去、転移してきたのも俺たちと同じ様に学生だったのだろう

革命的な技術進歩は為されていないようだった


俺たちは王都にある

異世界人用の寮に住んでいる

異世界人の受け入れ制度はしっかりしていて、1年間は寮に住ませ戦う為の術を身に付けさせるという方針みたいだ


初めの10日間はこちらの生活に慣れさせる為、自由行動となった

地球と変わらないとは言ったがゲーセンやデパート、映画館みたいな娯楽施設がある訳もなくゲームと言っても将棋やオセロみたいなものしかない


便利な現代社会を生きていた俺たちにとっては少し物足りなく、結局10日間ダラダラして過ごしてしまった


そうこうしていたら戦闘訓練と魔法訓練が始まった


戦闘訓練は様々な武器の中から、自分に合った武器を選び基本的な動きを学び

魔法訓練は魔力の使い方から魔法の発動方法を学んだ


2ヶ月間は全員で訓練し、その後4ヶ月間はそれぞれが得意な事に別れて訓練するみたいだ


訓練の時驚いたがクラスメイトの中に初島がいた

初島とはクラスが違う

偶然あの時うちの教室にいて巻き込まれてしまったのだろう

初島にとっては不運な事だが

こっちの世界でも初島に会えるのは俺としては嬉しい



――あっという間に半年が経過した



今日からついに害獣と戦う

と言っても最初はダンジョンと呼ばれる練習場みたいな所でみたいだけど

ダンジョンは初級ダンジョン、中級ダンジョン、上級ダンジョンと害獣の強さによって難易度が別れている


ゲームのダンジョンとは違い罠はもちろん宝箱の類もない

一定時間毎に害獣がリポップする練習の為だけの場所みたいだ

俺たちの最終目標は初級ダンジョンのクリアだ


4〜6人でチームを組むよう言われたのでいつもの4人で組むことにした

この中で魔法組の訓練に参加していたのは祐二だけなのでどれくらい成長したのかは未知数


さっそく初級ダンジョン攻略へと向かった


ダンジョン内は一本道の洞窟だった

恐る恐る進むと害獣らしき生物が一体現れた


「うわっ」「うげぇ」「なんだあれ」「気持ち悪い」


散々な言い様だが仕方ない

最初の2ヶ月に主な害獣について教わっていたけど実物を見るのは初めて

そこにはヘドロのような塊から手が生えた生き物がいた


「あれってなんだっけ」


「ヘドロ…」


「へドリアンじゃなかったか?」


害獣の名前はへドリアン

ちょっと安直な気もするけど見た目の通りだ


「ここは俺に任せな!」


祐二が1人飛び出す

へドリアンは物理耐性が高くちょっとやそっとの攻撃ではかすり傷すら負わない


「火よ、我が魔力を以て、燃え上がれ、ファイア!!」


両手を前に突き出し詠唱をする

祐二の足元に赤い魔法陣のような模様が浮かびあがり手から炎の玉が飛び出す


炎の玉はへドリアンに当たると燃え上がり

火が消えた頃には跡形も無くなっていた


へドリアンは物理耐性の代わりに魔法耐性が極端に低く、特に火系統の魔法に弱い


「テロン」


「うおぉぉー!!」


どこからかテロンと音がした

これは女神の祝福と言って、害獣を倒した時にたまに起こる現象らしい

簡単に言うとレベルアップだ

ただゲームのように体力、魔力が回復するなんてことは無く

能力の上昇も教会じゃないとできないらしい

そういう所だけやけに現実っぽいというかなんというか…


戦闘は問題なさそうなので奥に進んでいく

道中へドリアンが何体か現れたが全て祐二が倒してくれた

倒しているのは祐二だけだが、パーティの腕輪というものを付けていれば倒した時に貰える経験値が倒した者以外も得られるらしく祐二以外もレベルアップした


ようやくへドリアン以外の害獣が現れた

こいつはゴリアナ、一見するとゴブリンみたいな容姿だが全身黒く手だか足だか分からないものが全部で6本生えている

うつ伏せになって6本の手足で動く様は昆虫のようだ

へドリアンといい、ゴリアナといい

人間が嫌悪する容姿をしているのはなんなのだろうか?


考察はさて置き、今はゴリアナとの戦闘だ

そこそこスピードがあり、普通の人間が走る速度の1.5倍くらい

攻撃を当てるのが難しそうだが、攻撃の際は必ず飛びかかってくるので倒すのは簡単

剛は剣を、傑は刀が良かったそうだが無かったそうでなるべく細長い剣にした

俺は中学までボクシングをしていたので素手で戦いたかったが攻撃力とリーチの問題で槍を使うことにした


1番弱そうに見えたのか?俺の方にゴリアナが飛びかかってきた

タイミングを測り、槍先を突き出す


グサッ


練習で刺した時とは全く違う初めての感触

微妙に柔らかいような物を抉るような…とてもだが良いとは思えない感触だった

だがこれからこの世界で生きていく以上慣れなければいけない


結局この日は俺が3回、祐二が5回、傑が4回、剛が3回レベルアップした所で帰ることにした

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