第5話 お弁当
初恋
第5話 お弁当
入学式の翌日、教室に行くとなんだかザワついていた。
「おはよう雪、なんか教室がザワついてるようだけど、何かあったのか?」
先に来ていた雪にそれとなく聞いてみた。
「おはよう、なんかね、昨日の駅での出来事をクラスの誰がに見られたらしくて、玲さんが桜さんを叩いてたとか、桜さんがデートしてる時に男が乱入して修羅場とか、ある事ないと噂になってるみたい。」
(なるほどな、はたから見たらそういう捉え方もあるのか。)
「玲さんと桜さんは?まだ来てないの?」
「うん、僕が来た時はまだ居なかったよ」
「そうか、結局噂に尾ヒレが付いてるだけだから、誤解もすぐ解けるだろ。この事は2人に任せればいいさ」
そんな事を話していると玲と桜が2人並んで教室に入ってきた。
先程までざわついていたのが嘘かのように教室は静寂に包まれる。
優が2人を見ていると視線が合った。
桜は何故か頬を染めて玲の後ろに隠れた。
(なんだ?鈍感系主人公では無い俺はその行動の意味を察する事が出来るぞ?アレだろ?好きな人に会うと恥ずかしくて友達の後ろに隠れるアレだろ?)
「おはよう、佐藤くん、綾小路くん。ほら桜もきちんと挨拶しなさいよ。」
「おはよぉ、優くん昨日はありがとね」
顔を真っ赤にしながら桜が昨日のお礼を述べてきた。
「あぁ、2人ともおはよう。気にしないでよ、それよりも桜さんが無事で良かった。」
「それで…あの……お、お、おお…」
「ん?お?」
「おトイレに行ってきます!」
そう言い残すと、桜はダッシュで教室を出た。
「おトイレって…桜は恥ずかしがっちゃって。」
「俺なんかしちゃったかな?」
「ううん、桜がテンパってるだけだから。そうだ、良かったらお昼一緒に食べない?桜も呼んで佐藤くんと綾小路くんの4人で。」
そんな事を玲が提案してきた。
「勿論俺は大丈夫だよ」
「僕も大丈夫、でも何処で食べようか?」
「それなら外とかどうかしら?中庭で食べられるそうよ。」
「じゃあ、そうしようか。俺は購買に寄ってから行くから場所だけ取って貰っていいか?」
「分かったわ、じゃあそういう事で桜にも伝えておくわね。」
そう言って玲は自分の席に戻って行った。
しばらくすると桜も教室に戻って来て玲と話している。
桜は時折コチラは紅い顔してチラチラ見てくる。
そうこうしていると、仲のいい友達であろう女の子数人が桜達の周りに集まってきた。
何やら凄い盛り上がりを見せている。
時折女の子達が「きゃー」と黄色い声を上げている。
お昼の時間になった。
優は購買部に行こうと席を立つと桜が話しかけてきた。
「あの、今日は私…お弁当を作ってきたんだけど…」
「そうか、じゃあ俺は購買部に行ってから中庭に行くから先に行ってて」
「あ、そうじゃなくて…2つ作ってきたの!別に深い理由とかは無いけど、ほら!昨日のお礼に!何かしたいな〜って思ってネットで調べたら手作り弁当が良いって書いてあったし、別に要らないなら私が全部食べるし!こう見えても大食いなんだから!」
顔を真っ赤にして何やら言わなくてもいい事まで言う桜に優は笑みを浮かべた。
「ありがとう、そういう事なら有難く頂くよ」
「えへへ、良かった!じゃあ一緒に中庭に行こ!」
そういうと、桜は優の手を取り歩き出した。
(な、ななな、何で手を握ってくるんだ?陽キャはこれが普通なのか?最近の高校生はこれが普通なのか?…分からない…童貞の俺には理解が出来ない。ドキドキが止まらない、手汗とか大丈夫かな?)
チラッと桜の方を見てみると、その横顔は紅く染まっていた。
桜も相当恥ずかしい様だ。
そうこうしているうちに、中庭に着いた。
そこには雪と玲が既に座っていた。
「あら、仲がいいのね」
優は玲が何を言っているのか理解が出来無かった。
どこをどう見て仲がいいと言っているのか考えていると、桜と手を繋いでることを思い出した。
優は慌てて手を離して、照れを隠す様に慌てて雪の隣に座った。
桜が少し大きめのお弁当箱を持ちながらコチラに向かってきた。
「はい、お弁当!テキトーに作ったし味はあんまり期待しないでね!」
「え?朝5時に早起きして作ってきたって、さっき聞いたけど」
「そういう事は言わない約束でしょ!」
玲がそういうと桜は顔を真っ赤にして玲の隣に座った。
桜からお弁当箱を受け取った後、優はドキドキしながら、お弁当箱の蓋を開けた。
そこにはウインナー、卵焼き、ハンバーグ、更に唐揚げまで入っていた。
「おぉ!これはかなり美味そうだ!本当に貰って良いのか?」
「うん!昨日のお礼だから遠慮なく食べて!」
「ありがとう!じゃあ頂きます!」
そういうと優はハンバーグから食べた。
中にはチーズが入っていて、肉汁も凄い。
かなり凝ってる感じだ。
お次は唐揚げ。
何を隠そう、優の1番の好物は唐揚げなのだ。
優は唐揚げに噛み付く。
冷めているはずなのに、柔らかい。
お肉の臭みも無く味付けも優好みの物だ。
かなり下準備に気を使って、揚げ方にも余念が無い。
「桜さん!このお弁当、本当に美味しいよ!料理得意なんだね!」
「えへへ、ありがとう!実はうち両親が共働きだから、小さい頃から料理とかしてるんだ」
「小さい頃から…凄いね!俺なんて料理とか全然ダメだから尊敬するよ。桜さんは良いお嫁さんになりそうだね!」
そんな事を優は無邪気に言うと桜からボン!と聞こえた。
「良いお嫁さんなんて…まだ早いというか…嫌じゃないんだけど…段階を踏まないと…キスもしてないのに…」
何やら1人で盛り上がってる桜。
「ご馳走様でした。桜さん本当にありがとう!あ、お弁当箱は洗って返すね!」
「そんなに喜んでくれて嬉しいよ、お弁当箱は大丈夫。…あの、良かったら明日も作ろうか?」
「いやいや、流石に悪いよ!」
「ううん、実はそんなに手間はかからないんだよ。1人分も2人分も似た様なもんだし。だからさ、明日からも作ってきてあげるよ。私も美味しいって優くんが食べてくれるの、凄い嬉しかったし!」
「うーん、そういう事ならお願いしても良いのかな?でも材料費だけは出させて!」
「ありがとう、有難く貰うね!」
こうして優は毎日の楽しみが増えたのであった。
そして、優は桜の手を握った左手を見つめて、おかずならぬ
「もういい…俺はもうツッコまないぞ!中学生じゃあるまいし、手を握ったぐらいでオカズになるか!」
この日、佐藤家のある一室で、夜な夜なゴシゴシ、ハァハァと奇妙な音が聞こえたと、姉の澪が証言をしている。
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