第6話 犬扱い
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藁束の上で、すっかり、
色っぽいような話は何もない。
だが、人肌の温かさだけはよくわかった。
まだ、夜が明ける前に、
もぞもぞと動き出した、
「早いな」
「働かざる者食うべからずだよ。ポチは、まだ寝てていいだ」
「そうさせてもらう」
何か一仕事してきたのだろう。
既に夜は明けていた。
「ごはんにするだ」
俺は寝床から起き出した。
「ポチの分ももらってきただ」
手桶を床に置き、
手桶には冷えた残飯と匙が入っていた。
昨夜のギルド食堂の残飯だろう。誰かの食い残しの寄せ集め。要するに生ごみだ。
実質の奴隷待遇、と言っていた受付嬢の言葉が思い出された。
匙に手を付けようとしない俺に対して、
「食わないだか?」
「朝は食欲がわかないんだ」
もちろん、嘘だ。
「だから、おっきくならねえだよ」
「かもしれないな」
生き別れた愛犬だと思っているらしいのはわかる。
だが、愛犬と会話ができてしまっている事実は不思議じゃないのだろうか?
もしかしたら昔、
愛犬との空想の会話が、つらい現実からの逃げ場所であったのかも。
俺は勝手に、
探索者ギルドは、それこそ犬を飼うぐらいの気安さで、
拾ってきた犬に餌として残飯を与える程度の感覚だ。
犬ならば寝床と餌があれば十分だろう。
犬扱い。
突然、俺の中で、
俺はコボルトになって以降、何処へ行っても事情を知らない人々から犬呼ばわりを受けていた。
ずっと人でなく犬同然に扱われてきた、
受付嬢が言っていた、教育を受けていないとか、そういうのとは違う気がする。
一般的な
「食べないのなら、おら、食べるだよ。働くと、すぐに腹が減るだ」
「どうぞ。
俺は、
「おら、仕事が一杯あるだよ。働かざる者食うべからずだ」
「そうだな」
俺の中で、
言うなれば犬扱いの戦友だ。
飯が終わると、
「いい子で待ってるだよ」
ちゃんとした宿の予約が、しずらくなった。
ここにいる間ぐらい世話になろうか。
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