第36話 想い遙かに~真実と運命 ④
総統ユリウスから呼び出しを受けた時、マルデクの情報省長官オスカー・フォン・ブラウンは、エルフィンを救うために、総統ユリウスを撃つ覚悟をすでに決めていた。しかしオスカーを待っていたのは、総統ユリウスではなく、変性期を終える前に子を宿しがゆえに、瀕死の状態にあったエルフィンと、シャンバラ出身の医官にして
宇宙一の名医と言われていたハンネスの育ての親、ジャドだった。
「エルフィンからあなたのことは、聞いております。
ハンネスとはとても仲が良く、親友だったとか・・・。
私はハンネスの育ての親で、ジャド・フィリップ・セスと申します」
と、ジャドは柔和な笑みを浮かべ、オスカーにその手を差し伸べた。
しかし総統を撃つ覚悟だったオスカーは、はやる気持ちを抑えきれず、隠しもっていた電子銃をジャド師の頭に突きつけ、「総統はどこだ!」と叫んだ。
その時、エルフィンが目を覚まし、オスカーを見て、今にも消え入りそうな小さな声で、喘ぎ喘ぎ、言った。
「オスカー、ジャド師は私たちの味方だ。
撃ってはいけない」
その言葉と同時に、電子銃はオスカーの手から、なぜか忽然と消えていた。
驚くオスカーに、エルフィンは言った。
「私ではない。電子銃を消したのは、私でも、ジャド師でもなく、このお腹の子なのだ」
そしてそれは苦しそうに喘ぎながら、エルフィンはなおも言葉を続けた。
「この子はどうも、特別な力を、もっているようなのだ」
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