第35話 想い遙かに~真実と運命 ③

「もうどのぐらい日にちが経ったのだろう?」

と、もうろうとする意識の中で、ハンネスはつぶやいた。


 王宮の牢に、囚われの身となってからアメリアは毎日のようにハンネスの元を訪れ、エルフィンを諦めるように説得しようとした。


「エルフィンはあなたではなく、総統ユリウスを選び、今では総統の妻です。

 結局はあなたを裏切った恋人を、あなたはいつまで想い続けているつもりなのですか?」

とアメリアは悲しみと怒りが混じったまなざしで、ハンネスに自分の思いをぶつけた。


「この荒廃した世界を救えるのは、予言の運命の子であり、王家を継ぐものである私と私が選ぶ夫・・・と云う予言があることは、このマルデクでは誰もが知っていること。

 ハンネスさま、私は子供のころ、あなたに命を救って頂いた時から、予言の救世主はあなただと確信して、生きてきたのです。

 私はどんなことをしてでも、この荒廃した世界を救わなければなりません。

 ハンネスさま、あなただって、あの総統の悪行はご存じのはずです。その総統の妻になったエルフィンを、あなたは許せるのですか?」

 その言葉に、ハンネスは力なく笑った。


「あなたは私とエルフィンの長い年月にわたる、つらい日々を知らないから、そう言えるのです。私とエルフィンの絆は、特別なものなのです。男女の愛を越えた、特別な、運命の絆なのです」

と、ハンネスは苦しそうにつぶやいた。





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