第34話 想い遙かに~真実と運命 ②

「なぜ、あの時、本当のことを言ってくださらなかったのですか?」

 今さら何を言っても、始まらないことだったが、総統ユリウスは、言わずにはいられなかった。

 好き好んで、ユリウスは親友テセウスをその手で処刑したわけではなかった。


「そなたをシャンバラへ招待するか否かを決める、重大な使命をもってあのとき赴任していた。だから公正な判断を下すためにも、身分を明かすわけにはいかなかったのだ」と、ジャド師は言った。


「あの惨劇が起きなければ、そなたはシャンバラへ招待されるはずだった。

すでにシャンバラには、その判断を伝え、そなたの招待は決まっていたのだ」

 

 そしてあの時の一部始終をユリウスに伝えた。

「しかしあの惨劇が起り、我々はそなたをシャンバラへ招待するわけには行かなくなった。だから我々はそなたの代わりに、一人の赤子をシャンバラへ迎え入れることにした。そなたの妹アンジェリーナと使徒テセウスの息子ハンネスをそなたの代わりにシャンバラへ我々は迎え入れたのだ」


 その言葉に驚きながらも、

「それでは、私の甥は生きているのですね?」

と総統ユリウスは、その目に涙をためながら、師ジャドに言った。

 ジャドは静かにうなずいた。


「会えますか?」


「私と共に警備兵に捕まった若者がいたはずだ。

 あの若者が、そなたの甥ハンネスなのだ。

 だから早く、釈放してやってくれ」

とジャドは総統ユリウスに言った。


「ハンネスは、今、どこにいるのだ?」


 そう言われて初めてユリウスはアメリアの部下が、城に侵入した若者をなぜだか連れ去ったことを思い出したのだった。



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