第33話 想い遙かに~真実と運命 ①

「今、何と申した?」


 総統ユリウスは驚いたように振り向き、部下に問うた。


「はい。半月ほど前に、城に攻め入った3人組のひとりが、恐れ多くも総統さまの知り合いだと申しまして、総統さまに会わせろと叫んできかないのです。

 私はシャンバラ出身の医官で、ジャド・フィリップ・セスだ。宇宙大学校で、医術を教えていた“ジャド”と言えば、すぐ分かるはずだと、ずっと叫び続けておりまして、いかがいたしましょうか?」


 そして部下はこう付け加えた。

「ジャド・フィリップ・セス、と言えば、シャンバラ出身の医官で、宇宙一の名医、との噂を私も聞いたことがあります。

 しかしあのものが、その名医かどうかは・・・」

と部下は困ったように言った。


「シャンバラ出身の医官だと?」

 部下の言葉に、総統ユリウスは、驚きを隠せなかった。

 確かに、大学校に医術を教えていた“ジャド”という教官がいた。

 しかし大学校時代、シャンバラ出身で、シャンバラからの使いは、ウィルヘルム卿だと言われていた。 だからユリウスはウィルヘルム卿を師と仰ぎ、妹アンジェリーナのことを、相談したのだ。


 ウィルヘルム卿は、シャンバラから派遣された使者でありながら、シャンバラの掟を破り、王の婚約者であった妹アンジェリーナと恋仲になり、駆け落ちしようとした親友テセウスを成敗せよ、と言った。そしてそれは正義である、とユリウスに言ったのだ。


 もし、シャンバラからの使いがウィルヘルム卿でなかったのならば・・・。

 総統ユリウスは、居ても立ってもいられず、獄舎へ急いだ。


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