第20話 武官オリオンとアメリア ①

 武官オリオンは、ワープに失敗し、時の波に飲み込まれてしまったルカを救出することが出来なかった。それは作戦の大幅な見直しをオリオンに迫るものだった。

 地球に潜入することには成功したが、上官オスカーから託された最大の任務は、ルカの救出とその安全を確保することだった。

 オマケの任務に過ぎなかったアメリアをハンネスに会わせることさへ、今やそう簡単なことではなくなっていた。

 ルカは色々な意味で、マルデクを去る必要があり、理由があった。

 エルフィンとハンネスを頼り彼らのもとを訪れ、助けを請うことは理に叶っていた。しかしアメリアは違う。

 そもそもアメリアのハンネスへの恋心は、一方的なものであり、マルデク軍の一員としてエルフィンとハンネスの関係をよく知っていたオリオンは、その扱いに苦慮した。

 アメリアの母が現マルデク王の妹であり、アメリアと結婚するものが次の王となり、マルデクを救う者になる、という予言があることも、オリオンは知っていた。

 オスカーとアメリアが婚約を発表したとき、マルデク星の民は皆、その婚約がもたらす希望に胸を踊らせたのだ。しかしアメリアは今、オスカーではなく、ハンネスを選ぼうとしていた。

 それもマルデク軍の戦士が皆、恋していたとも言える、あのエルフィンの恋人であるハンネスを選ぼうとしていた。

 オリオンの胸中は、複雑だった。









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