第19話 秘密の計画

 その日、アメリアはルカを伴って、フォン・ブラウン家を訪れていた。

 フォン・ブラウン家の使用人たちは、かつては自分たちの仲間だったルカのその変貌ぶりに驚いた。

 ルカはすっかり女性への変性を終え、今まで見たこともないような美しい貴婦人になっていた。


 その日、3人は秘密の計画を実行に移すために、オスカーの部屋で、最後の打ち合わせをした。それはアメリアが持ち込んだ計画だった。

 オスカーは最初、その計画を受け入れる気はまったく無かった。

 しかし女性へ変性したルカの置かれた、あまりに可哀想な境遇に、オスカーはいたたまれず、アメリアの計画を最後には受け入れた。

 その秘密の計画とは、ルカの救出と引き換えに、アメリアが恋するハンネスの居場所を教え、そこへルカとアメリアを送り届けるというものだった。


「オスカーさま、私は王宮の占い師に、幼いころ、言われたのです。

 私の命を救ったものが、次のマルデクの王になると」


 アメリアのハンネスへの恋心に、一抹の不安を感じながらも、愛するルカを護り、救うために、オスカーはアメリアの計画を飲んだ。


「私は次の王をこの星へ迎えるために生まれてきたのです。

 だから今すぐ、ハンネスさまのいる場所を、教えてください。

 私はもう待つことに飽きました」


 計画は、数日後、実行に移された。

 オスカーは自分の代わりに、信頼する優秀な武官をふたりに同行させた。


  しかしこの計画は、半分成功し、半分失敗したのだった。

 アメリアと武官は無事に光の輪と時の輪からなる地球へと続くワープのトンネルを抜けることが出来たのだが、ルカは途中で光の輪をくぐり抜けることが出来ず、時の輪に飲み込まれてしまったのだ。

 ルカはふたりの目の前で、時の輪の渦の中へ消えて行った。





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