第18話  男装の麗人アメリア ④

「ところで、オスカーさま。我々の婚約破棄の決定はしばらくは伏せておきましょうよ。そのほう良いかと思います」

と、アメリアは言った。


「私はすぐ破棄されてもかまわないのですが、そうするとあなたはこの家への出入りを禁止される。あなたは愛するルカに会えなくなるから、困るでしょう?」

とアメリアは言った。


「兄は鈍感だから、気づかないけれど、ちょっと勘の良い人ならすぐ分かります。

 あなたのルカを見る目は、明らかに恋人を見る目でした」

アメリアは女であったが、物事を見極める能力に長けていた。


「ルカも気の毒よね。あなたのような有能で素晴らし人に愛されながら、兄ような策略家に見初められて、無理矢理、結婚させられたのだから・・・」

と言った。


「私、兄とは母親が違うんです。だから子供のころから、兄とはいつも喧嘩をしていました。私は女に生まれた・・・、ということだけで、いつも差別されていたのです」

と言った。


「兄はすごい男尊女卑なのです。王家の血筋である私に対してさへ平気で馬鹿にする。ルカは平民出身だから、どんな扱いを受けるかは、聡明なオスカーさまなら、おわかりになると思いますが・・・」

 確かに、クラウスは学生時代から、そういうところがあった。


「美しく着飾らせたお人形。ルカは兄にとって、自分のコレクションを飾るにふさわしい、誰もがうらやむお人形でなければならないのです。だから兄は毎日、ルカを貴婦人にするために、厳しい躾をしています。でも、躾とは名ばかりで、本当は自分の欲望と気晴らしのためだけに、ルカをいじめているのと同じ。ルカは平民出身だから、それでも何も言えない。何をしても自分は許されると、兄は本当に思っています。だからルカは、本当に良く耐えていると感心します。

 私だったら、とっくに逃げ出しています」

と、アメリアはオスカーに言った。





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