第17話 男装の麗人アメリア ③

 一途にハンネスを恋い慕うアメリアの言葉に、オスカーは真実を告げるべきかどうか、悩んだ。しかしアメリアの純粋な気持ちに心打たれたオスカーは、つらい真実をアメリアに伝えることにした。


「アメリアさま、申し上げてよいものかどうか迷ったのですが、知っていて知らんぷりもできないので、お教えします。

 あなたが恋慕うハンネスは、たぶん私の親友だと思います。

 そしてハンネスには、恋人がいます」

と告げた。


「エっ?」


「彼はその恋人と駆け落ちをして、このマルデクからすでに去りました。

 気の毒だが、あなたが彼の心に入り込む余地は、1%もありません」

と、言った。


「あなたが怪我をしたとき、一緒にいたものがその恋人です」


「エっ・・・!

 一緒にいた方は、女のように美しい方でしたが、男性のかたでしたよ」


「ハンネスと一緒にいた、女のように綺麗な者は、髪はこの星では珍しい、淡いブルーだったはずです」


「はい、そうでしたが・・・」


「間違いありません。あなたが会った命の恩人は、帝国軍のエルフィン将軍と

ハンネス医官です。そしてエルフィン将軍は、あなたがさっき狂っていると言った、総統の一番のお気に入りだった者です」

とオスカーは言った。


 驚くアメリアに、オスカーはなおも二人の話を続けた。

「総統は狂おしいほど、エルフィンを愛していました。

 そしてその狂気の愛はエルフィンの命さへも、奪いかねないものでした。

 エルフィンは、ある時、些細なことで総統の怒りを買い、総統からの拷問で死にそうになったのです。それを見たハンネスは、その命を救うために、エルフィンと共に

この帝国から去る決意をし、二人は帝国軍から離脱したのです」


「総統の一番のお気に入りと、本当に、駆け落ちしたのですか?」


「そうです。そして二人は今、帝国の重罪人として、賞金付きで指名手配されています。だから二人はもう、マルデクには戻りません」


「総統は美しい男しか、愛せない。そう聞いています。

 だから連れの美しい方が、総統の心を奪ったのは解るのですが・・・。

 あの方たちは、親しい友だち同士にしか見えませんでした。

 とても恋人同士のようには、見えませんでした」


「エルフィン将軍は、ルカもそうですが、両性具有の種族の出身なのです。

 彼らは変性の時を迎えるまでは、男でもあり、女でもある。

 エルフィン将軍はまだ未分化で、異常なほど美しかった。エルフィンに出会ったものは、誰もが心を奪われたものです。

 実は私もエルフィンに恋をしていました。エルフィンが女性に変性したならば、結婚したいとまで思っていました。

 この年まで独身だったのは、そのせいです」

とオスカーはアメリアに言った。


「それでも、私は、信じません。諦めません。

 あの方は、私の運命の方なのです。あの方がいたから、私は今、こうして生きているのです。私とあの方の出会いには、何か特別なものがあるはずなのです。

 占い師が、そう申しておりました」



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