第13話 騎士と永遠のレディー ⑥

 オスカーは悩んだ末、結局はクラウスの妹との婚約を承諾した。

 そしてルカのクラウスとの婚約は破棄された。

 それでこの話は、決着がついたかのように思われたのだが、しかし現実は違った。

 クラウスが諦めなかったのだ。

 クラウスは元老院のグスタフのもとへ行き、再びルカとの結婚を願い出た。

 その行為に困り果てたグスタフは、諦めさせるために、ルカが本当は親戚の娘ではなく、平民の娘で、身寄りのない彼女をフォン・ブラウン家で面倒を見ていたことを

打ち明けた。

 貴族が平民の美しい娘を愛人にすることはマルデクでも良くあったが、正妻に迎えることは、ほとんど無いことだった。


「申し訳ない、そのようなわけで、せっかくの申し出だが、お断りさせていただく」

と、グスタフは申し訳なさそうに言った。


 しかしクラウスはそれを聞いて、逆に喜んだ。

「そんなことを、気にされていたなんて・・・。だったら早くそう言ってくだされば良かったのです。私は生まれや身分など、気にしません」

と言い、再びルカとの婚約を、オスカーの父に願い出た。

 もはや断るすべも無く、グスタフ・フォン・ブラウンはクラウスの申し出を受け入れざるを得なかった。

 オスカーの知らない間に話は進み、ルカは予定よりも早くマイヤー家に嫁ぐことになった。

 オスカーの心を知っていた父グスタフは、すべてを秘密裏に進め、愛するルカとの結婚を誰にも邪魔されたくなかったクラウスは、自分の家族にさへ知らせず、ルカとの結婚式を決行した。


 ルカはその日、

「これから結婚式へ行くから一緒に来るように」

とオスカーの父に言われ、何もわからないまま、ついて行った。

 そして城のような立派な建物に着いたのだが、そこで着替えるように指示され、純白の美しい衣装に着替えた。見たこともないような美しいドレスだった。


 そしてオスカーの父から、

「これはお前の結婚式だ」

と言われ、

「おめでとう」

と言われた。


 ルカはてっきり、オスカーとの結婚式なのだと勘違いした。

 式が終わるまで、花嫁は厚いベールで顔を覆われ、花婿の顔を見ることは許されなかった。

 指輪の交換も終わり、聖なる誓いもすみ、司祭は、二人がマルデクの法にのっとり、正式に夫婦になったことを宣言した。そして花婿が、ベールの覆いを花嫁からとり去り、口づけしようとした。

 ルカは天使のような美しい幸せに満ちた笑顔で、花婿を見たのだが、

そこにいたのはオスカーではなく、結婚を断ったはずのクラウスだった。









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