第14話 騎士と永遠のレディー ⑦



「父上、あまりでございます。

 父上は、私がクラウスの妹と結婚すればルカとクラウスの婚約は、破棄してくださるとおっしゃいました。だから私は、アメリアとの婚約を承知したのです」


「わかっておる。だから婚約を破棄しても、かまわぬ。

 ただ自分で、アメリアの両親に会い、自分で婚約解消を申し込むように。

 あちらの両親が納得するなら、婚約解消を許そう」


  その日、オスカーは婚約解消を願い出るために、マイヤー家を訪れた。

 そしていつになく警備厳重なマイヤー家の様子に、驚いた。


「妹と両親は、今、あいにく出かけている。

 悪いが、いつ戻るか、わからない。

 でもせっかく来たのだから、ゆっくりしていけ」

と屋敷へ招き入れた。


「何かあったのか?」


「ああ、ちょっとした出来事がな」

とクラウスは言った。


「私の妻、ルカに恋をしていたものがいて、そいつの部下がルカを連れ去ろうとした」

と言った。


「犯人を捕らえることはできなかったのだが、それで今、警備を強化している。」

とクラウスは言った。

 そしてその日、オスカーは久しぶりにルカに会った。

 ルカは美しいドレスをまとい、まるで美しい花が咲いているかのようだった。


「きれいだろう? 変性が進むにつれて、ますます美しくなっている」


「儀式はもう済んだのか?」


「いや、まだだ。変性が終わるまで待つように医官から言われている。

 子供がほしければ、完全に変性が終わるまで待つようにと言われた」

と、クラウスはオスカーに言った。

 それを聞いてオスカーはうなづきながらも、まだルカを取り戻すことができるかもしれないと、心のどこかで思っていた。


 オスカーはひざまずき、すっかり美しいレディーになったルカに微笑みかけた。

 そしてルカの手をとり、挨拶のキスをしようとしたとき、ルカの指に光る、

美しい指輪に目が行った。

 それは見たことがある指輪だった。総統愛用の、特別な指輪と同じデザインだった。それは疑り深い総統が自分のお気にいりに、必ず送る贈り物だった。

 それはロック付きの指輪で、指から外すには、暗証番号が必要だった。そしてそれはGPS機能付きの盗聴器でもあった。

 オスカーは驚いて、クラウスを見た。


「あの指輪を、どこで手にいれた? あの指輪は総統が、いつも特注で作らせる、特別な指輪だ」


「総統からのプレゼントだよ。結婚祝いでいただいた贈り物だ」

とクラウスは言った。


「凄い指輪だよな。離れていても、妻の動向が良くわかる」

 それはクラウスが、四六時中、ルカを監視していることを意味していた。






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