第11話 騎士と永遠のレディー ④

 オスカーが父グスタフに会い、ルカの秘密を打ち明けたのは、それから、1週間以上も経ってからだった。


「実は父上、申し上げるのが遅くなりましたが、あの者は女ではなく男なのです」


 しかしオスカーの父グスタフは、まったく驚くもことなく、

「知っておる」

と、言った。


「エッ・・・?」


「医官のマクシムから聞いておる」

と、父は息子に告げた。


「だったら、なぜ、クラウスの申し出をお受けになったのですか?」

とオスカーは父グスタフを責めるように言った。


「あの者は最近、体に変調をきたし、医官マクシムのところへ行ったそうなのだ。

 それで分かったのだ。変性が始まったせいで、具合が悪いらしいのだ。

 医官が言うには、女性へ変性するらしい。

 変性が全部終わるには、一年ぐらいかかるそうだ」

と、グスタフは、息子に言った。


「クラウスに、結婚は早くても一年後になることは、伝えてある」

そして、

「あやつよほどあの娘のことが気に入ったようで、こちらが断れないように、あやつの妹とお前の縁談話までもってきた」

と付け加えた。


 それは、ふたつの縁談が、共にまとまることがベストではあったが、どうしても嫌なら、ひとつは断っても良いという選択肢を提示したものだった。

 フォン・マイヤー家の令嬢は、王族の血を引き、実は次の女王になることが、予言によって決っていた。彼女と結婚すると言うことは、次の王になると言うことだった。フォン・ブラウン家は大貴族だったが、身分的には王家がやはり上だった。だからその縁談は逆玉と言えた。しかしオスカーは、気が進まなかった。

 アメリア・フォン・マイヤーは知的で背が高く、楽しい会話で人々を魅了したが、ルカの天使のような美しさの前では、比べようがなかった。



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