第10話 騎士と永遠のレディー ③

 ある日、執務室にいたオスカーに部下から連絡が入った。

「オスカーさま、元老院のクラウス・フォン・マイヤー議員が、オスカーさまにお会いしたいと、お越しなのですが、どうされますか?」

 

 クラウス・フォン・マイヤーは学友ではあったが、それほど親しい間柄ではなかった。しかしマイヤー家はブラウン家と並ぶマルデクの名門貴族だった為、会わないわけにも行かず、オスカーはクラウスを執務室に案内させた。


「やあ、オスカー。久しぶりだな。

 君の活躍ぶりは、みんなから聞いてるよ。

 君無くして、帝国は成り立たない」


「お世辞を言うなんて、君らしくない。何か頼み事か?」


「当たり! 実は、君にどうしても力になってもらいたいことがあって、今日はやって来た」


「何だろう? 君がそんなことを言うなんて、何か、怖いな」


「そんなに、怖がるなよ。ただ、恋のキューピッドをお願いしたいだけだ」


「恋のキューピッド?」

 意外な展開だった。クラウスは自意識過剰な男で、王家の血を引く腹違いの妹が、予言により、次期女王に確定していることもあり、少し傲慢なところがあった。


「君の家にいる、親戚のお嬢さんを紹介してほしい」


「誰のことだろう?」


「先日、君の父上に急な用事が出来て、フォン・ブラウン家へ行ったのだが、その時、庭園で、ものすごく綺麗なお嬢さんを見かけてね。

 君の家の使用人に聞いたら、親戚のお嬢さんで、名はルカだと教えてくれた」


 オスカーは嫌な予感がした。

 クラウス・フォン・マイヤーは女遊びをするタイプでは無かった。

 この男の場合、紹介してくれは、結婚を前提にした付き合いを認めてくれ、ということだった。


「君の父上にも、実は、もう話してある。

 君の父上は、結婚を前提として付き合うことを、許してくれた」


 クラウス・フォン・マイヤーが帰るとすぐに、オスカーは元老院へ行き、父を訪ねた。


「ルカのことで、二人きりでお話ししたいことがあります」

と、オスカーは父グスタフに言った。


 グスタフは何も言わず、オスカーを手招きした。そして、

「ここは元老院だ。盗聴器も仕掛けられている。

 後で家に帰ってから、ゆっくり聞くことにしよう」

と言った。


 しかしその夜、総統がまた夜の街へ出かけ“ペット狩り”をすると言い出し、オスカーは総統に張り付かねばならず、結局は、家に帰れなかった。









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