第5話 オスカーとジェイド ③

 総統の寝室の一つである奥の間の扉の前で、兵士たちは賭けをしながら、時が経つのを待っていた。 

 総統が奥の間に入ってから、すでに30分が経っていた。


「今日も俺の勝ちのようだな。あの少年は、これから何日、もつかなあ?」

と兵士たちはあくびをしながら、また別の賭けを始めた。


「一週間がいいとこだろう。華奢な、ひ弱そうな子だった」


「可哀そうにな・・・」


 その時だった。

 けたたまし音とともに、何かが壁にぶつかる音がした。

 そして中からものすごい衝撃音がしたと思ったら、扉がバリバリと割れ、少年の体が転げ落ちてきた。


 見ると部屋の中では総統が、頭から血を流しながら、意味不明の言葉を吐き、必死に起き上がろうとしていた。そして、


「何をしている!

 あやつをすぐ、捕まえるのだ。

 逃がすな~!」

と総統は烈火のごとく怒鳴り散らしていた。


 二人の兵士は、必死で逃げる少年にやっとのことで追いついた。

 そして必死で抵抗する少年を羽交い絞めにした。

 しかし捕まえるふりをしながら、兵士は小さな声で、少年に言った。


「ここをまっすぐ行くと、門に囲まれた、大きな宮殿のような家がある。

 その家の門を右に向かって走れ。やがて小さな入口が見えてくる。その入り口を通って、中に入るんだ。そしてオスカーさまから言われた、と言え。助けてもらえる」





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