第3話 オスカーとジェイド ①

 オスカーは総統ユリウスを護るために、いつもは最後尾を行くのだが、その夜は若者を先に宮殿へ連れてゆき、夜伽の準備をさせる必要があり、若者を連れて先に宮殿へ行く許可を総統から取っていた。


 星空が美しい夜だった。 

 総統はエルフィンにも劣らない、美しい獲物を見つけたことで、久々に心が高揚していた。上機嫌の総統は、突然、少し歩くと言いだし、警備のものたちを困らせた。


 そのころ、宮殿に着いたオスカーは、宮殿の奥の間へ行き、おろおろしている少年に

「ここがどういうところか、お前は、分かっているのか?」

と尋ねた。


 少年は何もわかっていないようだった。

 

「さっきまでいたあの店が、どんな場所か分かっていて、お前はあの場所にいたのか?」

と、もう一度、尋ね直した。


「僕は親友と兄を、待ってただけです。

 あそこは何か、特別な場所なのですか?」


「あそこは男が男を買う場所。

 男娼という言葉を、お前は知らないのか?」


「知りません。何ですか、それ?」

と少年は無邪気に笑い、オスカーに尋ね返した。


 オスカーはあまりに無防備で、無邪気な少年にあきれた。


「可哀そうに、お前は、親友に、売られた。そういうことだ」

と事実を教えてやったが、少年はそれでも信じようとしなかった。


そして少年は一人、大きな宮殿の奥の間に残された。

大きな鏡張りの不思議な部屋だった。

豪華なベッドには異様な装飾が施されていた。

そして良く見ると、長い金の鎖が四方から左右に垂れていた。

少年はその時になって、初めてその異様さに恐怖を感じ、怯えた。






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