第13話 M&A実施方針

 その後も真奈美は、テレビ会議や電話、メール、そしてたまには中研に顔を出しながら、企画部の澤田部長や内村と議論を続けた。

 1月末ごろにやっとM&A戦略の青写真が出来上がったために、早速山根本部長に報告を行った。

 

「まずは当本部のM&A実施方針の策定が必要になります」

「本格的ですね」

「はい。方針が決まれば、それに沿った候補企業を探すことができますので、まずは案を作ってまいりました」


 真奈美はプロジェクターに、ここ半月の検討の結果をまとめた資料を表示した。


「ビジョンを達成するためのM&A方針は

 『新規市場への事業拡大』

 と考えています。

 そのために獲得すべき経営資源について、3つの軸に分けて考えました」


 市場軸:医療、介護、建設が最優先

 機能軸:販路+アフターサービス体制が最優先、開発生産があればなお可

 売上軸:100億円以上が希望(だが最初は制限を設けずに探す)


 真奈美は、それぞれを設定した理由は背景なども含め丁寧に説明した。


「……もちろん、すべてを完全にクリアしている企業などは少ないと思いますが、一旦このような方針でいかがでしょうか」


 すると、山根が嬉しそうに答えた。


「よくまとまっていますね。説明もわかりやすいです。さすが、落合さんご紹介ですので期待していましたが期待以上です」

「恐れ多いです」


 それを聞いて、真奈美は顔を赤らめた。


 経営管理部時代から、資料作りは真奈美の得意分野だった。

 加えて、MA推進部に移った後、山田や投資銀行、社外アドバイザー達などの手練れと様々なM&Aプロジェクトを進めることで、資料作成能力・プレゼンともにさらに向上しているようだ。


「だいたいそんな感じでお願いしたいと思います。

 でも市場はもう少し考えた方が良いかもしれません」

「市場ですか」

「医療は入れたらいいけど、まだ当本部の実力では荷が重いでしょう。

 逆に物流向けなどもありかもしれませんね」


 すると、澤田や内村も議論に混ざった。


「フォークリフトやクレーン作業が残っている現場は可能性ありそうですね」

「倉庫とかですね。あとは港湾とか……」


 議論は1時間ほど続き、やっとM&A実施方針策定が完了したのだった。

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