146話 村へ合流
「ハルク、どうした……えっ何?聞こえないぞ。『炉』?ああ、収納に入れたやつ……そうか、わかったよ」
俺がおろおろしている間に、ノーヴェがご主人から何事か聞き取っていた。
大丈夫かな。
こんな時にダインがいないなんて……。
ノーヴェはご主人を支えながら立ち上がり、ご主人に肩を貸して歩き始めた。
慌てて俺も反対側を支える。うっ、身長がぜんぜん足りない。
ノーヴェは落ち着いた声で、俺に事情を説明してくれた。
「大丈夫だよアウル。ハルクが熱いまま収納に入れた『炉』があったろ?あれを抑え込む、というか『武器』と認識し続けるのが難しくなってきたみたいだ。出せば治るから、村に行こう」
収納にそんな弊害が……。そもそも武器じゃない上に、熱を発し続けているから、『特殊収納』が拒否反応を起こしてるってことだろうか。
それが体にも症状として出てきたのか。
何それ、怖っ。
やっぱり無理して戦ってたんだ、ご主人。はやく『炉』を出さなきゃ。でも原因がわかって少しほっとした。
村までの道のりが、とても遠く感じた。
ナクレ村には、人がいなかった。
目立った被害はなさそう。ちょっと石垣が崩れたりしてるけど。
村の向こう側、街道に近い草原の窪地に、村人みんなが集まっていた。牛に山羊に鶏と、賑やかなことになってるな……それに、なぜかみんな真っ白な皿や壺を抱えていた。
俺たちの姿を見て、ざわめいている。
「ハルク!無事か!」
ルーガルの叫びに、ノーヴェがご主人のかわりに拳を突き上げて応えた。
「魔物は討伐した!」
その言葉に、ウオーーー!!っと歓声が上がった。
すごく揺れたし、ドスドス音がしてただろうから心配かけちゃったな。みんな無事でよかった。
みんながワッと集まってくる。
「ハルク……!大丈夫なのかい?そんなになるまで戦って……」
「いや、あのこれは違って」
「すごい魔法だったな!空から岩を降らせるとは!王都の魔法師ってのはそんなことも出来るのか!」
「それはオレじゃ……」
「宴だ!」
「うおーー!」
おとなしそうな村人たちだったのに、みんなテンションが高いぞ。
いろいろ勘違いされつつ、ノーヴェは人々をかきわけ、村長を呼んだ。
「窯まで案内していただけませんか。『炉』を持ってきましたので」
「おお!そうでしたか。話は聞いていましたが、まさか本当に……こちらへ」
みんなが宴だ!と盛り上がる中、俺たちは村長の案内で村の外れにある窯へ向かった。
窯は、大人の身長くらいでこんもりしている。その扉を、村長が開けた。
「ほらハルク、しっかりしろ。窯だ、『炉』を出して楽になれ」
「おや、『収納』に入れてらしたのか。それは大変だったでしょうな、さ、こちらへ」
「あまり急に熱しては、窯が壊れてしまいませんか」
「ご心配には及びませんぞ、窯は丈夫ですからな。壊れても直せば良いこと」
フラフラのご主人を誘導して、なんとか窯の中に『炉』を出すことができた。
モワッと熱気が広がる。すぐさま離れた。
収納、便利だけど何でもしまえるってわけじゃないのか……収納もどきが使える身としては、ちょっと怖くなっちゃった。
使い方に気をつけよう。
「ふう、これでよし。ハルク、抑えるのに魔力を使ったろ。魔力回復薬を飲んでおけ」
「ああ…………」
「本当にありがとうございました。魔物の対処だけでも大いに助かりましたが、『炉』まで取り返してくださるとは。これでまた、焼き物を作ることができます」
村長は丁寧にお礼を言ってくれた。
ぐったりしたご主人にまた肩を貸して、今晩の宿になる村長宅に向かった。そこで少し休ませてもらうことになった。
危機から脱したということで、村ではお祭り騒ぎになろうとしていた。
俺たちを食事でもてなしてくれるようだ。
とはいえ、小さな村の食料を貪るのは忍びないので、ご主人が狩った鳥など、俺たちからも食料を提供した。大変よろこばれた。
村人たちが準備をしている間、傭兵組と学者組は俺たちの話を聞きたがった。というか、話を聞き始めてすぐイスヒは「日が落ちる前に地質調査っす!」と叫んでルーガルを連れて遺跡へ走って行ってしまった。
もう日は落ちてるけど……。
イスヒとルーガルは抜きで、村長の家の中でしばらく報告を兼ねた雑談をした。
「……じゃあ、みんなあの窪地に避難したんだな」
「そうだ、建物の近くにいては危険だと判断してね。しかし、空から何か降ってきた時は、さすがに肝が冷えたよ。君の障壁の装置をイスヒが発動して……はは、本当に村全部覆う障壁だったな。おかげで村は無事だ」
「イスヒは魔力を使い切ってフラフラになっていたが」
「そっか、失敗作でも役に立ってよかったよ」
衝撃波、かなり抑えたと思うけど、それでも村が危なかったんだな……本当に紙一重だった。
傭兵組が村の人たちの避難誘導を頑張ってくれたみたい。牛とか家畜もたくさんいるからな。大変だっただろう。
彼らが村を守っていたから、心置きなく魔物に集中できた。
みんな偉かった。
「君たちだけに、あのような巨大な魔物の対処を任せてしまって、少しばかり後悔したんだ。街へ救助要請するか随分悩んだよ」
「でも本当に倒した。すごい」
「あー……うん。大変だったよ、かなり厄介なやつでさ……」
ノーヴェは討伐に至った経緯を、ほとんど包み隠さず話した。
武器も魔法も効かなかったこと。
まとっている障壁を壊した場合、周囲の魔力を吸い上げる可能性があったこと。
やむにやまれず、ご主人が古代遺物の武器を出してきて『星』を落としたこと。
それをノーヴェが障壁を張って周囲への影響を防いだこと。
そして……魔物の遺骸を浄化したこと。誰が、とは言わなかった。ありがたい。
みんな神妙に聞き入っていた。
「そんなことが……」
「あれはハルクの魔法だったのか……武術だけじゃなく魔法まで究めているんだな」
「難しい決定をしたな。よくやり遂げてくれた」
「それで、その……星隕の余波で大穴があいて……遺跡、なくなっちゃったんだ……」
ノーヴェは、ついにタリムに遺跡のことを報告した。叱られるのを待ってる子供みたいな態度だ。
タリムは静かにうなずいた。
「そうか。遺跡とは過去の幻影にすぎない。いずれは崩れゆくものだ。気に病まなくていい」
「……ハルクの言った通りだ」
「うん?」
「タリムならそう言うだろうって、ハルクが言ってたよ」
部屋の奥で横になって休んでるご主人は、沈黙したままだ。
ご主人の言ったとおりだったな。
みんなで少し、笑い合った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます