#31 彼女の葛藤と想い
「初対面の時は、恋愛的な好きっていうのは全く無かったかな。 でも、話しかけやすい人だとは思ったよ。 私、前に話したかもだけど、男の人と話すのが苦手だったの。 子供の頃から背が高くてずっとバレーやってて、中学の頃から部活漬けで、クラスとかの男の子からは全然女の子として見てもらえなくて…。 今なら本当はそんなこと無かったのかも?って思うけど、当時はずっとそう思い込んでて、それがコンプレックスだったんだよね」
「うん」
ミキは俺と付き合う以前、恋愛経験が全く無いと言っていたし、そのコンプレックスについても改まって話してくれるのは今日が初めてだけど、ちょくちょくそれっぽいことは言っていたので、何となくだけどそういうコンプレックスを抱えていたことは理解はしていた。
「それで女子高に入ったら益々男の子と話す機会が無くなって、高校の頃は男性と話すことに苦手意識持つようになってたの。 それは大学に進学してからも引きづってたんだけど、そういうの克服したいっていう気持ちもあったのね。それでリハビリみたいなつもりでレストランでバイト始めて、そしたらヒロくんと出会ったの」
「ほうほうほう」
そんな理由でバイトを始めたというのは、初めて聞く話だ。
「仕事中は凄く真面目で仕事も丁寧で、仕事の話でも雑談とかでも話しかけるとちゃんと聞いてくれるし、質問とかしても丁寧に答えようとしてくれるのが分かって、この人なら苦手意識の克服に丁度良いかもって思って、仕事以外の時間でも積極的に話しかけるようにしてたの。 男性への苦手意識はゼロじゃなかったけど、最初は普段女の子の友達と話すみたいな明るい口調を心掛けてなんとか普通に会話することが出来てて、そうやって頑張って話しかけるとヒロくんは毎回ニコニコしながら聞いてくれるし、真面目な話とかでもいつも真摯に答えてくれるように感じてて、いつの間にか異性だって意識しなくても無理しないで自然体で話せる様になってて、「秋山くんだと普通に話せるなぁ」って思うようになってたころに、まさかの告白されて」
「うん」
「デートに誘われた時もそうだけど、凄くビックリして動揺しちゃって、その場ではどうしたら良いのか全然わかんなくて、でも「ゆっくり考えてから返事してくれれば良いよ」って言ってくれたから、言われた通りゆっくり考えようって思ったんだけど、家に帰ってから一人になると全然寝れなくて、ヒロくんに『好き』とか『魅力的』って言って貰えたことが頭から離れなくて、男の人にこんなこと言われたの人生で初めてで、すっごく恥ずかしかったけど、でも全然イヤじゃなくて、むしろ時間が経つほど浮かれちゃってたくらいで」
「そっか、俺の告白、喜んでくれてはいたんだ」
「うん、凄く嬉しかった。 それで、嬉しくて自分でも顔がニヤけてるのが分かるくらいだったんだけど、ヒロくんに返事しないといけないこと思い出したら、「浮かれてる場合じゃないじゃん!返事どうしよ!?」ってようやく悩み始めて、自分じゃまだヒロくんのことが好きなのかどうか分かんなくて、でも絶対に嫌いでは無かったし、むしろ好感度凄く高かったし、悩んでたのも「どうやって断ろう」とかじゃなくて、「私なんかでちゃんと恋人になれるの?」っていう悩みで」
そんな風に思ってたんだ…、なんかミキらしいと言えばらしいけど。
「それでね、一番不安だったのは、やっぱり私が男の人とちゃんと付き合えるかどうかで、バイト先でのヒロくんのことは信頼してたし、私の中では他の男性と違う特別な存在だとは思ってたんだけど、でもバイト以外は全然遊んだこととかも無かったし、普段はどんな人なのか分からなかったから、もし普段も私が知ってるヒロくんのままならきっと大丈夫なんじゃないかって思って、それで普段のヒロくんのこと知りたくてデートのお誘い受けてみることにしたの。 あとは知っての通りかな。付き合い出したら私の方が夢中になっちゃってたね」
「なるほど…。 ぶっちゃけると、デートOK貰ってから俺の方でも「バイト中の俺に対する評価は高いみたいだし、普段通りにしてれば、大丈夫だよな」って考えて、デート中もそう心掛けてたね。 当時から俺達考えることは同じだったってことだね」
「そういうことになるのかな?うふふ。 でもね、最近色々あったでしょ?ストーカーとか山根さんのこととか。 ヒロくんにストーカーが居るって聞いて、「私以外にもヒロくんのことを好きな子が居るんだ」って思ったら、色々不安な気持ちとか湧いてきて、今までずっと楽しいばかりで浮かれすぎてたんじゃないかって思う様になって、それで付き合いだしてからのことを思い返すことが多くなってて、ヒロくんは私のことをいつも優先してくれるし、大切にしてくれてるけど、でも、いつか私のことに飽きたりしたらどうなっちゃうんだろ?って考えちゃうこともあって、「ヒロくんに好きでいて貰う為に私はこの先どうすればいいんだろ?」とか悩み始めて、そもそもヒロくんは私のどんな所を好きなんだろ?って思って、それでさっきの質問したの」
「そんなこと考えてたんだ…。 でも、俺も山根ミドリの話聞いてて思ったけど、俺の方からミキを嫌いになったり別れたいと思うことは無いと思うな。 そもそもそうなる要素が全く見当たらないからね。一緒に居て楽しいし、困ってる時とか凄く頼りになるし、ちょっぴりエッチなところも大好きだし、俺の家族とも何も問題なく上手くやれてるし、何よりも、俺の事を好きだっていう気持ちがビシバシ伝わってくるし、こんだけ愛されてたら別れるとかありえないでしょ」
「ヒロくんはやっぱりヒロくんだね。ヒロくんのそういう所、大好きだよ」
「んん?そういう所ってどんな所?」
「うんとね、普段は照れ屋さんで頼りない所とかもたまにあるけど、決めるべき所ではちゃんと決めてくれるっていうか、言って欲しい時に言って欲しい言葉をちゃんと言ってくれる所」
「それはまぁ、なんというか…、過去の恋愛経験で後悔することが何度もあったからかな。 以前は恥ずかしがって自分の気持ちを口に出せずにいたから、そのせいで当時の彼女の気持ちが離れていったんじゃないかって別れてから後悔することが何度もあって、ミキに対してはそういう後悔は絶対したく無いし、それにミキはそういう好意をちゃんと俺に示してくれてるから、俺もそうしないとって気持ちもあるし」
「そんな風に言って貰えると、やっぱり嬉しいね。 今日は色々話せて良かった。ヒロくんの本音聞けて今の自分にちょっぴり自信持てたし、やっぱり私はヒロくんのこと大好きで、私にはヒロくん以外には居ないって再確認出来たよ」
「俺もそうだね。ミキの葛藤とか悩みとか色々な話が聞けて、そういう所も全部ひっくるめてミキの魅力に繋がってるんだろうなって思えたし、やっぱり俺もミキのことが大好きなんだって再確認出来たね」
こんな話を語り合っていたせいで、お互い気持ちが昂ってしまい、人目が無いことをいいことにイチャイチャちゅっちゅとしていると、「今日もホテル寄って行く?」とミキが言ってくれたので、「すぐ行こう!」とミキの手を引いて急いで車に戻り、海岸線にあるラブホに寄ってから帰宅した。
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