#30 ドライブデート
帰省して三日目の日曜日。
この日の朝もミキに起こされて、情熱的なキスで襲われる。
昨日と同じように朝食を済ませ歯を磨いた後は、順番にシャワーを浴びて出かける準備を始めた。
今日は、ミキの家族用にお土産を買いに隣のE市にあるショッピングモールへ行く。
俺もミキも向こう(A市)でデートする時みたいにオシャレしてから、午前10時過ぎに母さんの車を借りて俺の運転で出発した。
俺は免許を取って丁度1年になるが、数えるほどしか運転したことが無く運転はまだまだ怖いので、ドライブと行っても精々隣のE市までしか行けない。
とは言え折角のドライブデートなので、道中の景色も楽しんで貰おうと考えていた。 F町とE市を繋ぐ主要な道路は、海岸線を走る国道と山を越える峠道と2つあり、今日は行きは海岸の方を通り、帰りは峠道を通って帰る予定だ。
山間部エリアにある自宅を出発すると町内を横断して海側を目指す。 海岸沿いにはローカル鉄道と並行して国道が走り、右手には海が広がり水平線まで見渡せる。
国道に出た後、昨日入ったラブホを過ぎた辺りから磯の香りが強くなり、太陽の日差しを反射してキラキラと光る海原が視界に入って来た。
海が見えるとミキは嬉しそうにはしているが、俺が車の運転に慣れていないことを知っているので、騒がずに大人しくしてくれていた。
家を出てから4~50分かけて目的地のE市郊外にあるショッピングモールに到着し、慣れない駐車に四苦八苦してなんとか無事に車を停めると、手を繋いで食料品のエリアを目指して歩いた。
お土産物を扱う店舗を何件も周り、ミキの家族だけでなく俺も三島たちの為にお土産を買った。
と言っても、ひと箱10個入りとかのお菓子を1箱だけだが。
ミキはたっぷり時間を掛けて色々見て周り、吟味に吟味を重ねて家族へのお土産をいくつも購入し、お盆の繁忙期にも関わらずシフトを休ませてくれたバイト先のレトランにも二人で出し合ってお高めの洋菓子のお土産を購入した。
買い物を終えるとお昼時だったので、モール内のパスタのお店に入り、食事を済ませてから帰宅の途に就いた。
来た道とは違う峠道を、超安全運転で走る。
こちらの道は交通量は比較的少なく渋滞とかは無いが、くねくねとカーブが続くし時間もかかるので普段は滅多に使わない。
ショッピングモールを出て40分程すると峠道も山頂付近となり、山の上からでも海が見える様になる。
そして、地元の人しか知らないだろう展望台があり、今日はそこへミキを連れて行きたかった。
道沿いに5台ほどの駐車スペースがあり、展望台の案内の看板が目印になっている。
今日は他には車が一台も停まっていないので、貸きり状態の様だ。
何も言わずに駐車スペースへ入り車を停めて降りると、ミキが「展望台があるの?」と言うので、「景色良いから寄っていこう」と答えてミキの手を取り歩き始めた。
駐車スペース脇に展望台へ繋がる道があり、その道を通ると直ぐに展望台に到着した。
展望台の上に立つと、目の前には陸と海と空が広がり、かなり遠くの方まで海が見渡せる。
「うわぁ~、ここの景色も凄いね!」
「遠くまで見渡せて、綺麗でしょ?」
「うん!」
ミキは嬉しそうに返事をすると、俺の右腕に抱き着く様に腕を絡ませてきた。
「ヒロくん、「田舎で何も無くて退屈するよ」って言ってたけど、全然そんなこと無かったよ! こっち来てからドコに行っても景色も空気も綺麗だし、楽しくて私は凄く好きになったよ」
「そっか、そりゃよかった」
「うふふ、連れてきてくれてありがとうね」
ミキはそう言って満面の笑顔で俺を見つめた。
吸い寄せられるように口づけし、再び海に視線を向けてのんびり眺めて居ると、「ベンチに座ろ?」と言うので、腕組んだまま座ってお喋りを始めた。
しばらく子供の頃の地元の思い出とかを話していると、ミキが海へ視線を向けたまま落ち着いた口調で俺に質問を投げかけて来た。
「ヒロくんにとって、私ってどんな人?」
「ん?どんな人とは?」
「うーん…、例えば、私にとってのヒロくんは、ずっと傍に居たくて、独り占めしたいし、他の誰にも代わりが務まらない存在?」
「そうだなぁ…、一緒に居たいってのは俺も間違いなくそうだね。独り占めも同じだね。ミキが他の男性と仲良くしてるところとか見たら、多分発狂しそうなくらい嫉妬すると思う」
「うふふ、そうなんだ」
「うん、嫉妬するのは間違いないと思う」
「じゃあ、私のどこが好きなの?どうして好きになったの?」
「えー、なんか今日はめっちゃ切り込んでくるね。答えるの凄く恥ずかしいんだけど」
「私だって恥ずかしいけど、やっぱ気になるし、でもこういう旅先のテンションとかじゃないとなかなか聞けないでしょ?」
「分からんでも無いけどさ…、そうだなぁ、真面目に答えると…、一番は性格というか人柄だね。 初対面から話しやすくて、バイトの仕事も凄く丁寧に教えてくれて、お喋りしてても話が合って楽しかったし、知り合って1カ月もしないウチに「あ、俺、この人のこと好きだわ」って自覚してたね」
「そんなに前から?」
「うん。だってバイト先で一緒に仕事するようになって、初日から気を使ってくれてたの分かったし、新人同士でいつも一緒だったから仕事中とかも色々頼りになって、少しづつプライベートの話とかもする様になると、話しやすくて話題豊富で面白いし、それにスタイル良くて顔も好みで、直ぐに好きになってたね。 それで、前にも言ったかもだけど「こんな人を彼女にしたい」って思ってて、彼女になってくれた時は、滅茶苦茶嬉しかったよ」
「そっか。うふふ」
「改めて聞かれてこうして思い返してみると、好きになった理由とか普通過ぎてつまらないかもしれないけど、でも、その好きって気持ちは、当時よりも今のがもっと強いというかなんと言うか…、兎に角、ミキのこと、大好きだから」
ミキの言う様に、旅先のテンションなのか、普段は恥ずかしくて言えない『好き』という言葉を何度も繰り返した。
でもやっぱり、恥ずかしいからミキの目を見て言うことは出来ずに、正面に広がる水平線へ視線を向けたままだったけど。
それでも、ミキには俺の気持ちが伝わったのか、ガバッと抱き着かれてビックリしてミキの顔を見ると、何も言わずにキスされた。
更にビックリしつつも、キスに応えながらミキの背中に両手を回して優しく抱きしめると、ミキは一度唇を離してから囁くように「私も大好き」と言って、再び情熱的なキスを始めた。
ミキが落ち着いてくれてから、今度は俺からも同じ質問をした。
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